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記事全文を読む→「ブタの腎臓を人工透析患者に移植」治験が始まるけど…臓器移植用クローン子ブタに潜む「致命的欠陥」「アメリカ死亡手術」
明治大学発のベンチャー企業「ポル・メド・テック」(神奈川県川崎市)が、ブタの腎臓をヒトに移植する異種間臓器移植の治験(臨床試験)を始めると発表した。このニュースに驚いた人は少なくないだろう。
早ければ2028年に北海道大学病院(北海道札幌市)と湘南鎌倉総合病院(神奈川県鎌倉市)の2施設で実施し、治験に問題がなければ2030年にも国に製造販売の条件・期限付きの承認申請を目指すという。治験の対象は、人工透析を続けている慢性腎不全患者に限られる。
製造販売が承認されたからといって、ブタの腎臓を購入して移植すれば慢性腎不全が完治するわけではない。日本に先駆けてアメリカでは2025年に、食品医薬品局(FDA)がブタの腎移植を承認したが、治験は数例にとどまっている。
アメリカは日本に比べて死後に腎臓を提供するドナー数が多く、あえてブタから腎臓をもらう「人体実験」を受ける必要がないからだ。
アメリカの移植外科医らが乗り気でない理由が、もうひとつある。アメリカでは2022年と2023年に、生きたブタから取り出した心臓を人間に移植する手術が行われたが、この2例以降、同様の心臓移植手術は行われていない。致命的欠陥が見つかったからだ。
2022年に行われたブタ心臓移植1例目は、拡張型心筋症を抱える57歳の男性。心臓が痙攣を起こすなどの不整脈を伴うため、臓器移植リストと人工心臓移植リストから外された重症患者だった。ほかに治療の手立てがないというアメリカ政府の「人道的許可」が下りて、ブタの心臓移植に踏み切った。だが手術から60日後に亡くなっている。
死因は「ウイルス感染」。移植したブタの心臓には事前検査をすり抜けた「ブタサイトメガロウイルス」が潜伏しており、移植後にブタサイトメガロウイルスが心筋で増殖。移植された男性へのウイルス感染はなかったが、心臓が機能しなくなってしまった。
移植手術後に激しい拒絶反応を起こし40日後に亡くなった
臓器移植用のブタはクローン技術で作られたが、クローンの元となった食用ブタがウイルスに感染しており、クローンが作られた時点で既に感染していたとのだという。
おまけにブタの遺伝子には、何百万年前のブタの祖先が感染したブタ特有のレトロウイルスが組み込まれている。クローン技術ではクローン元の感染歴、何百万年前の先祖の感染歴まで「複製」されてしまうというから驚きだ。
そこでアメリカの研究機関が、ブタの全遺伝子からウイルスに感染した部分など、数十カ所の遺伝子を操作。ウイルス感染の遺伝情報を除外し、無ウイルス状態のブタを作り出した。そのブタからさらにクローン子ブタを作り出して育てたのが、日本でも使われる臓器移植用のブタだ。
2023年の2例目には、これとは別の十数カ所の遺伝子を組み替えた、クローンブタの心臓が用いられた。ところが移植後から激しい拒絶反応が起き、手術から40日後に亡くなっている。どんなに遺伝子組み替えをしても、異種間の臓器移植では拒絶反応が避けられないという。
つまりブタからの臓器移植で見込めるのは、わずか数十日の延命。移植による拒絶反応で死期を早めることすらある。日本はアメリカ以上に人工透析が普及しており、それでもなお移植手術を希望する患者がどれくらいいるのか…。
日本国内では明治大学ベンチャーの他にも、国立国際医療研究センターや福岡大学などで、ブタの膵臓から取り出した細胞を糖尿病患者に移植する研究が進められている。これらの先端医療が治療法として確立されるかどうかは、神のみぞ知る領域だ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)
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