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記事全文を読む→毒蝮三太夫“人生90歳からだろ”「卒寿のマムシ酒」〈談志ほどのドケチはいない!?〉
今年で卒寿。90歳なんてめでたくもないが、なっちまったもんはしようがねぇ(笑)。
「えぇナニ、長生きの秘訣はなんですかって!?」
そんなことはわからねぇ。毎晩夜中の3時に寝て昼過ぎに起きる。晩酌のビールだって欠かさない。言ってみれば“規則正しい不摂生”な生活を今も続けてる。年寄りらしい暮らしなんぞには縁もゆかりもない。
「汚ねえババアだな」
なんてラジオで毒づいてたら、いつの間にか集まってくれる年寄りの中で俺が一番年上になっちまった。
でもよ、来てくれるジジイやババアも俺と会って話をすると、どういうわけか元気が出るらしい。近頃は“歩くパワースポット”なんて呼ばれるんだから、世話ねえよなぁ(笑)。そういやぁ敬愛する医師の日野原重明先生に、
「話すことでお年寄りを喜ばせ、元気にする。あなたは立派な名医です」
なんておだてられたこともあったな。さすがは日野原先生、うまいこと言う。
だがよ。俺は元を正せば、子役の頃から俳優一筋で生きてきた男。それがどこでどう道を間違えたのか。それもこれも、落語家で親友の立川談志。あの男のせいなんだぜ。まぁそのおかげで噺家でも芸人でもない俺が、生き馬の目を抜く芸能界で、この歳まで生きてこれたんだ。こりゃあ恩に着なきゃ、バチが当たるってもんだな。わっはっは。
そもそも大学の頃、落語好きの俺が劇団の仲間に、
「誰か紹介してくれ」
と頼んだのが当時二つ目・柳家小ゑんと名乗っていた談志との馴れ初め。奴は流行のマンボズボンに真っ赤なシャツを着たスカした野郎だったなぁ。ところが同い年で妙に馬が合ってね。亡くなるまでの長い付き合いになった。
談志って奴は、天才肌でカリスマ性があって、ものすごく心酔する人もいれば、思いっきり毛嫌いする人もいる。本人は「俺は俺だ」とうそぶいて、世間の評価なんざしゃらくせぇという態度をとる。だが、近くで見てきた俺からすれば、ありあまる才気ってやつに鼻面ひきまわされて生きてるように見えた。
そんな奴さんから演芸番組「笑点」(日本テレビ系)で、大喜利の座布団運びをやらねぇかと声がかかったもんだから驚いた。
当時の座布団運びは前座の仕事で、先輩噺家の座布団をひっぺがす時、躊躇してしまう。そこで落語界になんのしがらみもない俺に白羽の矢が立ったって寸法さ。しかも、談志には酒の席で、その7~8年前から、
「役者なんてよして、1人喋りの仕事をやれよ」
と何度も口説かれていた。
会話の最中の“ジョーク”や“茶化し”や“とぼけ”を、談志が滅法気に入ってくれてね。ところがこの座布団運びの仕事が思わぬ波乱を呼び起こすわけだ。
当時、俺は「ウルトラマン」(TBS系)に出演していた。これが視聴率40%を超える人気番組だったから客席から、
「アラシ隊員だ!」
なんて掛け声が子供たちから上がる。これをきっかけにクビになるかと思ったらそうはいかねぇ。談志は本名の「石井伊吉」じゃない座布団運びの芸名をつけようと言い出した。それが、ウルトラマンの怪獣にも負けない「毒蝮三太夫」というわけさ。番組で改名披露までやったんだ。
ところが翌年の「ウルトラセブン」が終わると、ドラマの出演依頼がガクッと減っちまってね。俺がしおれていると談志の奴、
「毒蝮三太夫で売れなかったら毎月20万円、俺が出してやる」
と啖呵を切りやがった。
当時のサラリーマンの月収が10万円くらいの時代。天才・立川談志がそこまで言うんだ。俺も腹を括ったというわけさ。もちろん20万円をもらうつもりはなかった。
世間で談志はケチだケチだと言われているが、本当はそうじゃない。宵越しの銭は持たない「江戸っ子」とは違うが、使う時には使う。なかなかキップのいい男なのさ。
毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)1936年生まれ。石井伊吉(本名)で「ウルトラマン」(TBS系)などに出演。「笑点」(日本テレビ系)2代目座布団運びでの出演を機に現在の芸名に改名。69年より出演を続ける「ミュージックプレゼント」(TBSラジオ)のほか、ユーチューブ「マムちゃんねる」でも現役で活動中
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