政治
Posted on 2026年07月09日 13:00

産油国なのに燃料がない!ウクライナの「製油所ドローン爆撃」でロシアが「軽油輸出禁止」「石油製品輸入」戦車とトラクターが奪い合い

2026年07月09日 13:00

 世界有数の産油国ロシアが、自国のガソリンや軽油に困っている。それを証明したのは、アレクサンドル・ノヴァク副首相による、7月8日のアナウンスだった。プーチン大統領も出席したオンライン政府会合で、ディーゼル燃料(軽油)の輸出禁止と、7月からの石油製品輸入開始を明らかにしたのだ。禁止期間は7月末までで、政府間協定に基づく供給は例外とされる。

 ロシアのガソリン不足情報はこの数カ月ずっと流れており、本サイトでも報じている。ロシアは4月1日にガソリン、6月1日からは航空燃料の輸出をすでに止めている。今回はそこに軽油まで加わった。
 しかもノヴァク氏は、7月からの石油製品輸入開始も明らかにしている。輸出を止めるのは、国内に回す量を確保する守りの一手だ。だが輸入まで踏み込むとなると…。巨大産油国が燃料を他国から買わないと足りないところまできた、ということになる。

 原油そのものが枯れたわけではない。ロシアは今も掘っている。だが、走れる燃料が足りない。ガソリン、ディーゼル、ジェット燃料。いずれも原油をそのまま使えるわけではなく、製油所を通して初めて燃料になる。その製油所がウクライナのドローン爆撃により、次々に破壊されているのだ。産油国ロシアの弱点は、油田ではなく製油所だった、ということだ。

 ノヴァク氏は会合で、燃料市場がなお厳しい状況にあると説明した。ロシアのインタファクス通信によると、ガソリンとディーゼルの小売需要は前年同期比で約3割、膨らんでいるという。稼働率の引き上げ、備蓄放出、修理の短縮。並べられた対策は、生産側の追い詰められ具合をそのまま物語る。
 ロイターが業界筋の話として伝えたところでは、6月下旬時点でのロシアのガソリン生産は、前年同期比で約25%減。7月6日にはシベリアのオムスク製油所が長距離ドローン攻撃を受け、翌日に操業を停止した。オムスクは年間処理能力が約2200万トン。ロシア最大の製油所とされるこの巨大工場が止まれば、その影響は西シベリアだけでは収まらない。

給油1回30リットル上限とナンバープレートの数字で給油日を分類

 軽油禁輸出のインパクトは、乗用車の話だけにとどまらない。軽油は物流トラック、農業機械、軍用車両を動かす燃料であり、いわば国家の足腰だ。政府は外貨を稼げる輸出よりも、国内需要に燃料を残す判断を迫られている。
 
 余波はロシア国民の生活にも及ぶ。6月下旬、ロシアはカザフスタンにガソリン約5万トンの供給を打診した。インドからも海路でガソリンが入り始めている。
 国内では独立系ニュースサイト「メディアゾナ」が、少なくとも56地域での給油制限を集計。1回30リットルまでを上限とすることや、携行缶への給油禁止が相次ぎ、オリョール州のクリチコフ知事はナンバープレートの数字で給油日を分ける案まで持ち出した。
 7月2日にはミシュスチン首相が、硫黄分の多いユーロ3規格ガソリンの流通を2026年末まで認める政令に署名している。品質基準を下げてでも、量を回す。苦肉の策だ。

 今や「戦車とトラクターが燃料を奪い合う状況」と言ったら大げさだろうか。軽油が軍用車両、物流トラック、農業機械のいずれにも関係する燃料であることは間違いない。ガソリンスタンドの行列は前線の戦況とは別の形で、プーチン政権の足元をじわじわ削っている。

(ケン高田)

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