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記事全文を読む→「世代論」で読むプロ野球〈令和の怪物世代・続〉(2)完全試合達成が推し量る未来
「怪物」と呼ばれる投手には、普通の好投では観衆に満足してもらえない難しさがある。160キロを超える直球も、打者のバットを空に泳がせるフォークも、見慣れてしまえば期待の最低ラインになる。佐々木朗希の歩みは、類いまれな才能で期待を膨らませながら、その期待と現実の間を埋めていく時間でもあった。
22年4月10日、ZOZOマリンスタジアム。ロッテの佐々木はオリックスを相手に、20歳5カ月で史上最年少の完全試合を達成した。13者連続奪三振の日本記録と、1試合19奪三振の日本タイ記録まで伴った105球。打者27人のうち、三振以外でアウトになったのはわずか8人だった。守備の好プレーを待つ以前に、打球そのものを生ませない投球だった。
しかし、その試合を球速だけで説明すると、本質を見落とす。3三振を喫した吉田正尚は、直球とフォークを腕の振りから見分ける難しさに加え、「なんせコントロールがよかったです」と振り返っている。球界を代表する打者を追い込んだのは、速さと落差、そして狙ったところへ投げられる精度の組み合わせだった。
捕手・松川虎生との共同作業も欠かせない。4回の吉田には、カーブを2球続けてからフォークで空振り三振を奪った。剛速球を待つ打者の頭の中に、別の速度を差し込む。その工夫が、もともと強烈な決め球をさらに生かすことになった。高卒新人の松川は、完全試合について「ワクワクのほうが大きかったです」と話している。
佐々木自身の言葉は、「最後まで松川を信じて投げました」だった。1人の怪物がすべてをねじ伏せたように見える試合で、本人が語ったのは仲間への信頼だったのである。怪物という呼び名の陰には、捕手の要求を受け取り、目の前の1球を丁寧に投げる投手がいた。19奪三振を奪いながら105球で終えたことにも、その日の完成度が表れている。
一方、シーズン全体へ目を移すと違う輪郭が見える。22年は129回3分の1で173奪三振、防御率2.02。23年は91回で135奪三振、防御率1.78。24年には初の2桁となる10勝を挙げたが、投球回は111回だった。日本球界在籍時に規定投球回へ到達したシーズンはない。登板したときの支配力と、年間を通じて投げ続ける力は、まだ同じ水準にはなかった。
これは完全試合の価値を減らす話ではない。過去の最高の自分が、次の登板を測る物差しになる。佐々木の栄光と苦悩は、別々の物語ではなく、同じ才能から生まれている。
ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。
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