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Posted on 2026年10月31日 10:03

「世代論」で読むプロ野球〈令和の怪物世代・続〉(4)各々の「最強の可能性」を模索

2026年10月31日 10:03

 26年も、佐々木の歩みには「中断」があった。8月下旬、右手中指のマメによって負傷者リスト入りし、9月には救援として復帰した。前年の右肩の問題とは別の理由でも、予定していた登板は失われてしまう。投球の技術を磨くことと並行して、体の状態を保ち、次の登板へつなぐ難しさは残っている。

 もっとも、救援への配置転換を、そのまま先発失格と解釈する必要はない。短期決戦で1回を任せられる投手には、先発とは異なる重要性がある。試合の流れも、点差も、対戦する打者も決まった状況に入り、その場で最大の力を出す。役割が変われば、準備と判断の方法も変わる。

 ロバーツ監督は26年9月の好救援を受け、球の改善だけでなく、前年に同じ役割を経験したことを評価した。

「総合的に見れば、昨年よりいい投手になっている」

 との言葉は、成長が球速計だけに表れるものではないということを教えてくれる。

 大舞台で投げた記憶は、次の大舞台で自分を落ち着かせる材料にもなるからだ。

 では、先発として頂点を目指すためには何が必要か。まずは、好調時と不調時の落差を縮めることである。直球の走りが十分でなくても、別の球でカウントを整える。フォークを見送られたら、ストライクゾーンの中で勝負する手段を選ぶ。最高の状態でなくても試合を壊さず、打線に勝つ余地を残す。その積み重ねが、監督の起用にも計算を与える。

 そして、試合の中だけでなく、登板間の調整も再現できなければならない。自分が力を発揮しやすい体の状態を知り、疲労や違和感をスタッフと共有しながら、必要な練習と休養を選ぶ。これは精神力で押し切る話ではない。才能を長く発揮するために、どこまで自分を理解できているかという「仕事」だ。

 救援で得た経験を先発へ生かす際にも、短い回での出力を、そのまま長い回へ引き延ばすことはできない。打順が二巡、三巡する中で、見せた球をどう使い直すか。球威が落ち始めたとき、どの球なら打者の狙いを外せるか。

 佐々木が将来エースになるなら、豪速球の陰にある、こうした細部の判断が重要になる。「ポテンシャル最強」という評価は、期待としては魅力的だ。しかし、それはまだ将来への言葉である。完全試合で示した支配力も、MLBのポストシーズンでつかんだ成功も、次の登板を保証しない。保証がないからこそ、投手は準備し、修正し、またマウンドへ上がる。

 佐々木朗希の完成形は、完全試合をもう一度達成することだけでは測れない。特別な一日に世界を驚かせる投手から、難しい日にも勝利を託される投手へ。その変化を重ねた先に、「令和の怪物」という呼び名にふさわしい、息の長い全盛期が待っている。

 01年世代を「佐々木朗希世代」と呼ぶとき、その名前は一人の勝者を指す言葉である必要はない。宮城が追いかけた剛速球、奥川が認めた可能性、そして本人がMLBで直面した壁。それらをつなぐ名前として捉えれば、この世代はもっと立体的に見える。

 完全試合を達成した者も、甲子園を沸かせた者も、年間を支えた者も、まだキャリアの途中にいる。かつて誰が上だったかより、これから何を身につけるか。佐々木が世界の頂点へ近づく道も、同世代を置き去りにする一本道ではない。仲間たちが示してきた異なる強さを、自分の投球へ取り込んでいく道でもある。

 令和の怪物の物語は、一人の天才の完成を待つ物語であると同時に、01年世代が、それぞれの場所から互いの可能性を広げていく物語なのである。

ゴジキ:野球評論家・著作家。「データで読む甲子園の怪物たち」(集英社新書)ほか著書多数。「マネジメント術で読むプロ野球監督論」(光文社新書)が重版出来。発売前から重版となった最新刊「システムで読む甲子園」(カンゼン)が絶賛発売中。Yahoo! ニュースエキスパート。

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