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AKB48や中川翔子、リア・ディゾンが「アキバ枠」として話題をさらった07年、さらに異色のシンガーがいた。戸籍上は男でありながら、史上唯一の紅組での出場となった中村中(あたる)(30)のこと──。
──厳密には05年、ガレッジセールのゴリが「ゴリエ」というキャラクターで紅組から出場したことはあります。こうした“飛び道具”ではなく、正統派で紅組から出場したことは例がない。どちらの組で、という協議はありましたか?
中村 それはなかったですね。出場が決まると同時に紅組で、という流れだったと思います。
──紅白出場時は22歳ですが、披露した「友達の詩」は15歳で初めて作った曲だったとか。
中村 まだ「性同一性障害」という言葉も確立されておらず、私は人と違う気がする。自分は何者なんだろうか、愛することはいけないことなんだろうか、いや、そんなことはない‥‥。そんな自分自身のアイデンティティを確かめるために書いた曲で、それで出場できたのはうれしかったです。
──この曲のヒットと前後して、メディアにおける「カミングアウト」も話題になりました。
中村 そうですね、知ってもらういい機会になるのかなと思いまして。
──さて、この年の紅白は紅組の司会がSMAPの中居正広、白組が笑福亭鶴瓶というイレギュラーな組み合わせ。歌の前には性同一性障害であることの紹介VTRが流れ、さらに鶴瓶が母親からの手紙を読み上げるという丁寧な演出。
中村 そうでしたね。母親からの手紙に「親不孝かもしれないけど、こうして歌っていくことが親孝行」と返していますね。
──ただ、新人としては、かなり後半の出番が用意され、紅白全体の進行が約2分半の遅れ。紹介VTRや手紙のくだりをカットする指示も出たと聞いています。
中村 私もあとで知りました。隣で中居さんが何度も首を横に振っていて、その時はわからなかったんですけど、スタッフからの指示を毅然として拒否なさっていたそうです。
──中村中のエピソードはきちんと紹介すべきだという瞬時の判断ですね。
中村 はい、中居さんにも、最終的にはNHKさんにも性同一性障害に対する理解を感じました。あのまま紹介VTRがなく歌に入ったら、同じような事情を持つ人たちが悲しんだかもしれない‥‥。
──紅白で歌っての反響はどうでしたか?
中村 私の尊敬するゲイの方がいらっしゃるんですが、それまで親にもカミングアウトできていなかったと。あの日、一緒に紅白を観ていて、親御さんから「ひょっとして、この人と同じなのか?」と聞かれ、初めて打ち明けられたそうです。
──広いステージでの歌い心地も格別だったと思います。
中村 新人では異例なのですが、私のバンドを率いての生演奏だったんですよ。セットチェンジにも時間がかかるのに、それをOKしてくれたNHKさん、当時のレーベルのエイベックスさん、そして、当時の所属事務所にも感謝しています。
──紅白の長い歴史の中でも、紹介VTRからの流れを含めて「名場面」にカウントされています。
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