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Posted on 2016年08月31日 05:57

NO1ヒットメーカー売野雅勇が明かす“80年代アイドル”の戦乱(1)河合奈保子が初めて見せた涙

2016年08月31日 05:57

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 ニッポンの「アイドルブーム」が頂点に達した80年代、その勢力を盤石にした作詞家がいた。70年代を阿久悠、90年代以降を秋元康とするならば、80年代に最も輝いたヒットメーカーが売野雅勇である。今なお伝説として語られる“80年代アイドル”の戦国時代を、ここに余すところなく伝えよう。

〈作詞活動35周年おめでとうございます。せっかくのお誘いですが、まだマスコミの前に出る状態ではなく、記念コンサートの出演を辞退させていただくことをお許しください〉

 文面に誠実さがにじみ出る。松田聖子と同じ80年にデビューし、幅広い層に愛された河合奈保子(53)が、作詞家・売野雅勇氏に送ったメールである。

 売野氏の作詞活動35年を祝い、8月25日には詞を提供した藤井フミヤ、鈴木雅之、中村雅俊らが集い、中野サンプラザで盛大な記念ライブが開催される。多くのヒット作を手がけた奈保子にも“ダメ元”で依頼したが、約20年の「事実上の引退」に終止符を打つことはなかった。それでも、と売野氏は言う。

「メールの最後を〈日本は暑いですか? オーストラリアは今、冬だから寒いです〉と結ぶのは、彼女らしい気遣いを感じました」

 96年の結婚と同時に芸能活動を休止し、現在はオーストラリアに移住して主婦として暮らしている。8月31日にはアイドル時代の写真集とライブDVDが同時発売されるなど、本人不在にもかかわらず、その人気は再燃するばかり。

 売野氏は13枚目のシングル「エスカレーション」(83年)で初めて組み、奈保子にとって最高売り上げ(34.9万枚)をもたらしている。さらに、その後はトータルのプロデュースも担当するようになった。

「海外のレコーディングにも同行しましたが、そこで初めて涙をこぼす場面を見ました。彼女は新人賞の授賞式でも『泣くと歌えなくなるから』と涙を見せないことで有名でしたが、この時はアメリカ人のディレクターが厳しかったせいか、あるいは、うまく歌えなかったせいか、悔しそうな表情でした」

 売野氏に「絶対に1位をとれ」と指令が下ったのは、奈保子のデビュー5周年シングルであった。新たな気持ちで臨むという意味を込め、タイトルは「デビュー~Fly Me To Love」(85年)と決まっていた。

「21作目にして初めて1位をとれてホッとしました。彼女とは長く組んでいて、イヤな思いをさせられることが一度もなかった」

 さて売野氏は、広告代理店のコピーライターや、ファッション誌の編集長という経歴を経て、81年にシャネルズの「星くずのダンス・ホール」で作詞家デビュー。広告出身のキャッチーな言語センスは、新人のデビューに起用されることも多かった。

 その一人、本田美奈子(享年38)のデビュー曲は、なんと「殺意のバカンス」(85年)というアイドルにあるまじきタイトル──。

「彼女自身の歌唱力が高いこともあって、フリフリのアイドル路線を否定していた。それに音楽出版の担当からも『インパクトのあるタイトルでいきましょう』という注文でした」

 もう一つ、倉沢淳美(49)のソロデビュー曲「プロフィール」(84年)も、歌詞に倉沢の生年月日、身長、性格などが盛り込まれた斬新な詞であった。

「下敷きにしたのは、湯川れい子さんが書いた松本伊代の『センチメンタル・ジャーニー』です。あの歌では『伊代はまだ16だから』という歌詞が話題になり、それをさらに拡大した形。ただ、あれだけ自己紹介のフレーズが続くと、どうオチをつけるかに苦心して『あ~つみ』と連呼させるしかなかった」

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