芸能

病魔と闘う荒ぶる役者たちの不屈秘話 「第1回・松方弘樹」(3)100人を招いての大宴会

20161020j3rd

 松方が「最後の役者」と呼ばれるのは、勝新太郎にも似た羽振りのよさだ。88年から付き人を務め、現在は東映・京都撮影所の演技センターに勤務する須賀章は、懐かしそうに振り返る。

「たとえ先方がスポンサー筋の実業家であっても、飲んだ相手には絶対に支払いをさせない。僕がオヤジの財布を預かっていて、必ず先に払いに行かないと機嫌が悪くなっていました」

 現在は手放してしまったが、松方は京都に約1000坪もの広大な邸宅を持っていた。主演映画や正月の大型時代劇など節目の撮影が終われば、この豪邸が大宴会場になったと須賀は言う。

「庭が広いせいもあって、東映からバスを連ねて100人くらいが集まったと思います。屋台をいくつも呼んで、庭ではカニなどを焼いたり、それは豪華。儲かった金は右から左で、年間ン億円は使っていたんじゃないかと思いますね」

 芸能界きっての酒豪でもあった。ヘネシーのボトルを何本も空け、同席する芸能人には「かけつけ3杯」といたずらっぽく笑い、意識を失わせることも少なくなかった。

 そんな酒豪が鳴りを潜めたのは、90年代に入ってからと須賀は記憶する。

「舞台の連続公演をやっていた時に、疲れがいつになくひどい時があった。医者に診てもらったら、まず『血液がドロドロです』と言われ、さらに『このままだとヤバいですよ』とも。オヤジも、酒があまりうまくないと感じていたこともあって、そこから控えるようになりましたね」

 松方自身、体重が増えて役者としてのキレを失ったとの自省もあり、禁酒に踏み切る。また、85年にスタートした「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」(日本テレビ)でバラエティに初進出し、女子高生からも「松方部長!」と黄色い声援が飛ぶ人気を獲得。これに中島貞夫は、苦言を呈したことがある。

「テレビのほうが圧倒的に観ている人は多いから、弘樹ちゃんに『あんまり出るなよ』と言った。俺が最後に組んだ『首領を殺った男』でも、バラエティのイメージが強すぎて“修羅に生きる男”を描きにくかった」

 修羅、という言葉で思い出すのは、松方自身が「これで一本立ちした」と生涯の傑作に推す「修羅の群れ」(84年、東映)である。稲川会初代会長・稲川聖城をモデルに、週刊アサヒ芸能に連載された同名小説を映画化。鶴田浩二や菅原文太を脇に回しての主演ゆえに、喜びもひとしおだった。

 この作品まで付き人だった勝野賢三は、ラストシーンを観て、師の晴れ舞台であると感じ取った。

「鎌倉霊園で墓参りをして、そこから主題歌が流れるクライマックス。健さんの『唐獅子牡丹』もそうですが、壮大な歌が流れることで主演者になったんだなと感動しました」

 そんな松方が入院してから半年以上が経過した。所属する「夢グループ」によれば、病状は「現状維持のまま」であるという。持ち前の辛抱強さで、再び「フンドシを締め直す日」の訪れを願いたい。

カテゴリー: 芸能   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「致死量」井上清華アナの猛烈労働を止めない「局次長」西山喜久恵に怒りの声
2
完熟フレッシュ・池田レイラが日大芸術学部を1年で退学したのは…
3
またまたファンが「引き渡し拒否」大谷翔平の日本人最多本塁打「記念球」の取り扱い方法
4
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
5
高島礼子の声が…旅番組「列車内撮影NG問題」を解決するテレビ東京の「グレーゾーンな新手法」