スポーツ

「ミスター・長嶋茂雄」を育んだ佐倉ものがたり(1)二宮金次郎像に欠かさず礼

20161201e1st

 今年も佐倉で「少年野球教室」を開催し、精力的に動き回った。生を享け、国民的スーパースターへと駆け上がっていくまでに幾多のドラマを生んだ地、そしてどんな時でも必ず戻ってきた場所──。長嶋茂雄を追い続けたノンフィクションライター・松下茂典が、ミスターの源流を訪ね歩いた。

 ことし80歳の傘寿を迎えた長嶋茂雄が、こよなく愛するものは、桜と富士である。彼が生まれ育った千葉県佐倉市には「大佐倉」という地名がある。「大佐倉」は語源が「大桜」で、それが「大佐倉」に転じたと言い伝えられている。

 かつて浪人中の長嶋が花と緑の農芸財団理事長を務めているとき、「なぜ桜が好きなのですか」と質問され、こんなカッコいい返答をしたのを覚えている。

「桜というのは満開のときも美しいし、散り際もすばらしい。でも、それ以上に、花を咲かせるため、1年間じっと耐え忍ぶところが大好きなんです」

 11月13日の日曜日、佐倉市の岩名運動公園陸上競技場で「第3回長嶋茂雄少年野球教室」が開かれた。午前9時半、長嶋が薄茶色のハーフコートとニット帽をかぶってグラウンドに姿を現すと、どよめきが起き、拍手と歓声が交錯した。

 この日、スタンドに集った一般観覧者は1200人。役員・関係者は160人。小学校1年生から6年生までの参加選手は504人。長嶋が巨人の監督を辞めて15年の歳月が流れたが、カリスマ性は健在だ。

 開講式に臨んだ長嶋は、「みんな野球を楽しんでください」と、しっかりした口調で語ると、その後、競技場内を3時間も精力的に歩き回り、子供たちを指導した。キャッチボールの指導では、左腕をぐるぐる回し、「ひじを高く」と叫び、ゴロの捕球練習では両足を深く折り曲げ、「前で、前で」と大声を発した。

 長嶋が「心原性脳塞栓症」(不整脈から冠動脈の中に血栓ができ、脳の血管を詰まらせる病気)で倒れたのは、2004年3月4日。以来、厳しいリハビリをみずからに課し、驚異的な恢復(かいふく)を遂げていた。

 長嶋の指導を目を細めて見守っていたのが、佐倉市長の蕨和雄だ。

「さっきも、階段の上り下りを、不自由なはずの右足から突っ込んでいきました。お会いするたびに元気になられ、奇跡としか言いようがありません」

 3回目を迎えた「野球教室」は、ほかならぬ蕨市長が仕掛け人だった。

「3年前、佐倉市民栄誉賞授賞式をここでやったとき、佐倉の子供たちに野球を教えていただけないかとお願いし、快諾いただいたんです。長嶋さんは『ライフワークにしたい』とおっしゃってくださっていますので、こうなったら、終生やっていただきたい(笑)」

 10月16日、長嶋の愛弟子の松井秀喜が地元の石川県で「野球教室」を開いたが、まだ42歳。80歳になっての「野球教室」は前代未聞と言っていい。

 小、中学校時代の同級生、小林光男に話を聞くと、勤勉なところは父・利(とし)、働き者なのは母・ちよの影響だという。

「臼井小学校の校門を入ると、広い校庭があって、校舎の前に二宮金次郎像がありました。登下校の際、生徒は全員、校門のところで一礼するのが常でしたが、茂雄ちゃんだけは、二宮金次郎像の前でもお辞儀をしていました。入学から卒業まで、登下校の際、二宮金次郎像に礼を欠かさなかったのは、茂雄ちゃんだけでした」

 長嶋らしいのは、大田区田園調布に家を建てた時、庭に二宮金次郎像をつくったことである。

 この日、小林は来賓として招待され、同級生2人といっしょに控え室に入り、長嶋に会った。

「3人が入っていくと、茂雄ちゃんは『おおーっ』と驚き、顔をくしゃくしゃにしました。持参したアルバムを開き、昔の写真を見せると、二宮金次郎像の写真に目を留め、『あっ、臼井小学校だ』と声を上げました。別れ際、長嶋家の4軒隣に住んでいた同級生が『昔のように呼ばしてくれるか』と言い、『茂雄ちゃーん!』と叫び、笑顔で別れました‥‥」

松下茂典(ノンフィクションライター)

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    「男の人からこの匂いがしたら、私、惚れちゃいます!」 弥生みづきが絶賛!ひと塗りで女性を翻弄させる魅惑の香水がヤバイ…!

    Sponsored

    4月からの新生活もスタートし、若い社員たちも入社する季節だが、「いい歳なのに長年彼女がいない」「人生で一回くらいはセカンドパートナーが欲しい」「妻に魅力を感じなくなり、娘からはそっぽを向かれている」といった事情から、キャバクラ通いやマッチン…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , |

    今永昇太「メジャー30球団でトップ」快投続きで新人王どころか「歴史的快挙」の現実味

    カブス・今永昇太が今季、歴史的快挙を成し遂げるのかもしれないと、話題になり始めている。今永は現地5月1日のメッツ戦(シティ・フィールド)に先発登板し、7回3安打7奪三振の快投。開幕から無傷の5連勝を飾った。防御率は0.78となり、試合終了時…

    カテゴリー: スポーツ|タグ: , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
【球界爆笑秘話】ボールがアレに当たって悶絶する捕手に長嶋茂雄が放った「まさかのオヤジギャグ」
2
事務所が猛抗議!「星野源W不倫10億円もみ消し」仰天暴露投稿に挙がった「NHK美女アナ」の名前
3
2試合33失点の歴史的惨敗!楽天・今江敏晃監督「打つ手なし」で「途中休養」カウントダウン
4
「ちょっと待って」と視聴者!由美かおる73歳の短すぎるスカートが真っ昼間にさく裂で「これ、ひざ上何センチ?」
5
元フジテレビ・久代萌美が「仕方なく妊娠発表」したのは「気になりすぎるネットニュース」があったから