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「ほら、あの○○○のやつあんだろ? あれ使ってよ、漫才作りたいんだよ。お前、水曜空いてるか?」
6月最後の月曜の夜、珍しく殿からの直電があり、2日後の“漫才台本会議”を早々に告げると、殿は続けて“じゃー追加でよ”といった感じで、
「○○○のやつ、ちょっといろいろ調べてといてくれよ」
と、ネタのベースになる、目下、絶賛世間を賑わせている、とある時事ネタについての資料を、来る時には持ってきてほしいと宿題を課し、電話を切ったのです。
水曜日、指定された17時半、殿の仕事部屋にうかがい、あいさつを済ませて、広々としたリビングの真ん中にドカンと鎮座する、どでかい和テーブルの前に正座する形で腰を下ろすと、「おい、足崩せ」と、まずはお気遣いを頂き、
「まー打ち合わせなんてのは名目で、ホントはただ飲みたいだけなんだから」
と、殿は軽くボケたあと、すぐさまわたくしが持参したA4用紙2枚にまとめた時事ネタの資料をじっくりと3分程吟味されたのです。
そして、「この○○○をよ、スクリーンを使って、○○○にしてやりてーんだよな。例えばよ‥‥」と、9月5日に開催される、「ビートたけし“ほぼ”単独ライブ」の中で披露する“どうしてもやりたいネタ”について、丁寧に説明を開始。その後、会議を20分程続けると、
「まー、そーいうこった。頼むな。おい、俺はシャンパン飲むけどよ、お前、何飲む? 最初、シャンパンでいいか? あっちに日本酒も焼酎も何でもあるからよ、好きなもん飲めな」
と、細いシャンパングラスを手に取り、“もう会議は終わりだ。飲むぞ”といった調子で、“本格的な飲み会スタート”を宣言しました。
ちなみに、殿が指した“あっちにある日本酒と焼酎”を確認すると、そこには、酒飲みなら死ぬまでに一度は口にしたい、どれも入手困難な名酒の数々が所狭しと並んでおり、〈これはセーブして飲まないと、殿の前で醜態をさらすことになり、しくじる可能性大だな。気をつけねば〉と、いつになく警戒心を自覚したわたくしでした。宴会をスタートさせ小一時間経過した頃、
「9月にライブやったら、今度は映画が始まるのか(『アウトレイジ 最終章』10月7日公開)。また忙しくなるな。あっ、フジの『27時間』(総合司会・9月放送予定)もあるのか! ひゃ~、こりゃまた地獄だな。まーいいか」
と、下半期も通常レギュラー番組に加え、ドシドシと追加されるさまざまな仕事に対し、ややうれしそうに、悲鳴を漏らしたのです。
「おい、酒あるか。もっと飲めよ。酔ってションベンでも漏らされちゃかなわねーけどよ、泣いて潰れるくらいならいいんだから」
結局、この日の小さな宴会は、23時を過ぎた頃、“もうこれ以上飲んだら完全に記憶が飛ぶ”寸前のところでお開きとなり、わたくし、しくじることなく、無事、殿と別れたのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!
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