エンタメ

映画「空海」公開記念対談!「平安の超天才」は3カ月で密教の祖師になった(4)両手足と口に筆をくわえて

美甘子 四国八十八カ所のお遍路さんというのは、空海が巡った場所なんですか?

河合 全部回ったかどうかはよくわかりませんが、空海と縁があるということです。空海が入定(にゅうじょう)して、弟子たちが空海の修行の跡を訪ねて回ったのが始まりで、江戸時代に盛んになったと言われています。

美甘子 女性は30代に2回厄年があって、今年私は2回目の厄年なので、先日、川崎大師に厄払いに行ってきました。川崎大師にも、空海=弘法大師(こうぼうだいし)さんがいらっしゃいましたね。空海ゆかりの場所って、日本全国にあるのもすごいですね。四国にはお遍路さんが歩いている時に地元の人が御接待(おせったい)といって、食べ物を提供したりすることがあるんです。私の故郷の大三島(おおみしま)には札所(ふだしょ)はないんですが、子供の頃から「お大師(だいし)さん」といって、子供たちが島を回って、お地蔵さんとか普通の家のお仏壇にお供えしてお参りしたりするとお菓子をもらえたり、炊き込み御飯みたいな「もぶり御飯」という御飯を食べさせてくれたりする風習がありました。母に聞いたら、今年は5月6日に「お大師さん」をやりますって。旧暦の3月21日でお大師さんの命日なのかな。あと、高野山には私も何回か行っていて、あそこでは、空海は今も生きていると信じられていて、お坊さんたちが弘法大師御廟(ごびょう)に朝早くに御飯を持って行くところを見たりしました。空海の廟がある奥の院に行く途中には、信長や秀吉など有名な武将のお墓もたくさんあって、すごい雰囲気ですよね。

河合 武将の墓は敵味方に関係なくありますね。高野山に行くと罪が消える、アジール(聖なる避難地帯)という感じで、特に戦国時代には評判だった。日本史上の傑物・偉人が高野山を信仰していますね。また、空海の業績は、密教以外にも土木技術など、治水の技術をもたらしたことでしょうね。当時の科学技術の最先端とも言える、アーチ型の堤防を造った満濃池(まんのういけ)の修復とか。

美甘子 朝廷にも評価されるよう、技術や知識も学んで帰ったんですね。

河合 そういう意味では、ちゃっかり計算していたんだと思います(笑)。

美甘子 外国から優れた文化や学問を持ってくるのは空海の時代から続いているんですね。

河合 そう、今度「大久保利通 西郷(せご)どんを屠(ほふ)った男」(徳間書店・2月28日刊)という本を書いたんですが、まさに明治維新では、大久保利通らは、遣欧使節団として欧米を見てきて、これまた短期間のうちに、法律や制度だけじゃなく、いろんなものを持ち帰っています。空海はまた、貧しい庶民でも平等に学べる、日本で初めての私立学校とでも言える綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)という学校を開いたり、手広くいろんなことを成し遂げた。“超天才”であったのは間違いないですね。両手足と口に筆をくわえて、五行の詩を一気に書いたとか、そういうパフォーマーでもあったようですよ。

美甘子 人を引きつけるアーティストであり、頭がよくて、厳しい修行にも耐えられる。本当にスーパーマンですね。

河合 詩も書けば、本もたくさん書き残しています。「弘法筆を選ばず」などのことわざに残るように、字も上手だったし。ちょっとかなわないですよね。

美甘子 若い女の子に写経がはやったり、八十八カ所巡礼の旅に出る人たちも増えているので、この「空海」の映画が公開になるというのは、とても楽しみ。

河合 天才ぶりを見るのが楽しみです。

<プロフィール>

河合敦(かわい・あつし)1965年、東京都出身。青山学院大学文学部史学科卒業、早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学(教育学研究科社会科教育専攻日本史)。高校教師27年の経験を生かし、歴史研究家、歴史作家として講演、執筆、テレビをはじめとするさまざまなメディアで日本史の解説を行っている。新書判「大久保利通 西郷どんを屠った男」(徳間書店・2月28日刊)など著書多数。昨年は自身初の歴史小説「窮鼠の一矢」(新泉社)を上梓。

美甘子(みかこ)1982年生まれ。愛媛県今治市、国宝とロマンの島・大三島出身。専修大学文学部日本語日本文学科卒業。坂本龍馬など歴史上の人物をこよなく愛する「歴ドル」として、テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍中。高知県観光特使、神々の国 宮崎PR大使、いよココロザシ大学生徒会長なども務める。著書に「龍馬はなぜあんなにモテたのか」(KKベストブック)などがある。趣味は歴史上の人物のお墓参りと、昭和の香り漂う純喫茶巡り。特技は幕末の志士たちの変名や辞世の句が言えること。

「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」全国東宝系にてロードショー

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
2
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
3
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
4
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか
5
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」