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11月引退を決意した天龍源一郎が「革命と反骨39年」を語り尽くす!(3)最後に行き着いたのは家庭だった

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── 89年11月29日には札幌で馬場さん、94年1月4日には東京ドームでアントニオ猪木さんをフォールする偉業を成し遂げました。

天龍 馬場さんをフォールした時は、社会的ブームになっていたUWFが東京ドームに進出した日でしたからね。いずれ天国で馬場さんに会ったら「あの時は本当に俺の押さえ込みを返せなくて『天龍、参った』っていう気持ちでしたか?」って聞きたいですね。今となっては馬場さんの強烈なるプロ意識、経営者の感覚で1行でもいいからUWFの東京ドームじゃなくて全日本プロレスをスポーツ新聞の紙面に躍らせてやろうという策略があったんじゃないかと思うんです。馬場さんは徳川家康の本をよく読んでいましたからね。

 猪木さんのすごさは、1回も肌を合わせたことがない馬場さんの子飼いだった俺との一騎打ちに踏み込んだこと。あの土性骨には恐れ入ります。

── 90年春、40歳で全日本を退団してから65歳の今日まではメガネスーパーのSWS設立に参加したり、みずからWARを旗揚げしたかと思えば、全日本復帰、フリー、天龍プロジェクト旗揚げなど波乱万丈の人生でしたが、それによって長州、藤波辰爾や武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の闘魂三銃士などの新日本のトップ選手との対決、大仁田との電流爆破マッチ、UWFスタイルの高田延彦、女子プロの神取忍など、夢の試合が実現しました。

天龍 スポットライトを浴びているヤツに、その時に触らなかったら語れないって思う俺がいましたよ。だから対戦相手を求めて右往左往している俺がいたんですね。飽きることなく常に一歩踏み出す自分がいた。一つの場所にいると「こんなはずじゃない」って何かを模索する。それを貧乏性って言うんですよ(苦笑)。

── 2010年4月19日の天龍プロジェクト旗揚げ戦で腰部脊柱管狭窄症になってしまい、12年に2度の手術を受けましたが、現在のコンディションは?

天龍 俺は手術をすれば100%の天龍源一郎に戻れると思ったんですよ。布団に入った時に「明日、ジョギングしよう!」って思う俺がいたんです。現実問題として、いろいろな技ができなくなった今は「天龍源一郎、お前は下手だな。もっと勉強しろよ!」と思っていますよ。だってレスラーはキャリアを重ねればどこかを故障しているはずだけど、みんなはうまくこなしてるんですよ。今こそカブキさんに「大丈夫だよ、源ちゃん! あと5年ぐらいしたらうまくなるよ」って言ってほしいですよ(苦笑)。何か技をやってみてひっくり返ったら、それは省いて違う技をやればいいのに腰が引けちゃうからダメなんです。13歳で相撲社会に飛び込めたのに、こんな度胸も決められない俺は情けないよねぇ(苦笑)。

 そんな自分に腹を立てていた5年間でしたけど、もう大丈夫ですよ。怖いものなしですよ。11月までの9カ月間で「これが天龍源一郎だ!」っていうのを見せるだけですから。自分を全てさらけ出すのもファンに対するお返しだと思うんです。そのまんま見せていくから、観るほうも覚悟してくれよという感じですね。

── プロレスを腹いっぱいやり、嶋田源一郎として家族のもとに帰るんですね。

天龍 2000年夏に分裂騒動が起こった全日本プロレスから戻ってきてほしいと言われた時に、馬場さんのいる頃のお袋のおっぱい恋しさみたいな感じで戻ったけど、昔とは違って戸惑いや躊躇がありました。

 全日本を出た三沢が旗揚げしたノアに05年に行った時も同じですよ。昔の三沢じゃなくて社長の三沢光晴だから、距離を置いてつきあわなきゃいけないんだなって感じでしたね。

 だから結局、行き着いたのが家庭だったんですよ。今、俺が恩返しをして満足感を持ってくれて、その満足感をまた俺に返してくれるのは家庭しかなかったんですよ。農家の長男だったのが、思わぬことで相撲に入ることになって13歳で上京して、流転の52年でしたからね。安住の地を探しながらさまよっていたんだと思いますよ。それが見つかった俺は幸せですよ。

◆聞き手・小佐野景浩

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