社会

実録・東京電力「福島原発コールセンター」の闇(2)ストレスで離職者も多数

 翌週から、TL(テーエル)の指示に従い、実践的な研修が始まる。TLはチームリーダーの略、昔で言う係長と同等の役職だ。派遣社員同士で電話の受け答えの練習をするロールプレイや、ベテランオペレーターのリアルタイムの会話を聞くモニタリングなどを行う。

 電話を取るようになるまでには、3カ月くらいかかると言われていた。膨大な賠償内容からいって、それが妥当だと思った。

 ところが実際には、1週間ほどで、電話を取った。

「たいへんご迷惑をおかけしております。東京電力ホールディングス、福島原子力補償相談室、フカブエでございます」

 それがオープニングトークである。東電は加害企業であるから、「お電話ありがとうございます」とは言わない。緊張で声が震えた。原発事故の被災者にライターとして話を聞いたこともあったが、今は加害者の東電として応じているのだ。TLがモニタリングして指示してくれるので、そのとおりに答えていたら、会話は終わった。内容については、まるでわからなかった。

 そこから、ベテランオペレーターにモニタリングしてもらいサポートを受ける形になる。ベテランたちは親切な人ばかりで、終わったばかりの会話の内容を解説してくれる。

「こうやって一生懸命教えてあげてるんだから、絶対に辞めないでね。一緒に入ってきた同期なんか、もう私しか残ってないんだから」

 そんなふうに付け加えるベテランもいた。加害企業として応対するわけで、会話のちょっとしたミスからでも、相談者は怒りだす。そんなストレスから、離職していく者も少なくない。

 オペレーターは、30代から60代と幅は広いが、高年齢が多い。ほとんどはごく普通のルックスだが、パンクロックでもやっていそうな、スキンヘッドの男性もいる。通勤時には大きなヘッドホンをしているから、本職は音楽関係なのか。化粧が水商売風な女性も目立つ。これも本職だけでは食べられないというケースか。別のスキンヘッド男性は、ヒゲを蓄えていてヤクザ風だ。これも本職は‥‥いや暴力団から更生した男性かもしれない。

深笛義也(ジャーナリスト)

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