スポーツ

貴乃花「八百長爆弾」で相撲協会と玉砕する(2)告発状の「封印したい中身」

 それにしてもなぜ、相撲協会側は撤回された告発状にここまでこだわったのか。スポーツジャーナリストが解説する。

「一般的には、貴乃花の告発状は協会が暴行事件を第三者に委ねることなく内々で処理しようとしたことを問題視していた。実際、被害者の当事者である貴ノ岩の聞き取りも行っていない不十分なものだった。また、みずからが巡業部長として協会に報告を怠ったことにより理事解任の処分が下ったことに関しても、警察に被害届を出し、あくまで第三者に判断を委ねたものだと、みずからの正当性についても反論していた。ただそれだけではなく、この告発状には相撲の根幹を揺るがすタブーについても触れられていたんです」

 まさに不惜身命、愛弟子を守りたいという思いで内部告発を行った貴乃花だが、協会としてはこの告発状を“事実無根”と完全否定しなければならない理由があったという。

「内閣府に提出された告発状の全てが明らかにされているわけではないが、もちろん協会はその全文に目を通している。その中には過去の協会の不祥事として、弟子へのかわいがり、野球賭博、そして最大のタブーたる八百長に関しても記述があったようです。仮に、告発状が受理され、内閣府が調査に当たるとなれば、蓋をしたはずの相撲界のタブーが再び表ざたとなる可能性があるわけです。協会としては税制上の優遇措置が受けられる公益財団法人の立場を取り消されるおそれがあるため、なんとしてでもこの告発状の存在を抹消したかった」(相撲部屋関係者)

 これまで浮かんでは消えていた八百長疑惑について、平成の大横綱が文書とはいえ、その存在を暴露する事態となっては、世論の支持はおろか、なんとか死守してきた八角理事長体制をも一気に吹き飛ばしかねないスキャンダルとなる。どんな手段を使ってもこの告発状を闇に葬り去りたいというのが本音だったという。だが、あくまで弟子を守り、相撲界の改革を成し遂げたい貴乃花にとっては、八百長疑惑を俎上に載せないわけにはいかない。怒りをあらわにしてまで矛先を向けたのは、他ならぬ「モンゴル互助会」だった。

「相撲道に邁進する貴乃花は、暴行を振るった日馬富士のみならず、その場に同席した白鵬の共犯を疑っていた。カラオケ店に同席しながら、リモコンで殴打する日馬富士を止めなかった白鵬こそ黒幕ではないか、という考えです。なによりも本場所前に行われる別部屋のモンゴル出身力士との飲み会には、弟子である貴ノ岩に固く出入りを禁止していた。というのも、この“モンゴル互助会”こそ、力士同士の星回しの温床になっていると目くじらを立てていたからです」(ジャーナリスト)

 現役時代、本気相撲で21回の幕内優勝を勝ち取った貴乃花としては、なによりも見過ごすことのできない悪しき慣習に違いなかった。

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