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五木寛之×椎名誠「僕たちはどう死ぬるか」(2)昔はやたら旅をしていた

五木 椎名さんは4年ほど前に『ぼくは眠れない』(新潮新書)という本を出されてますね。不眠に悩まされているとありましたが、最近は眠れてますか?

椎名 眠れないですねぇ。

五木 ぼくは椎名さんのご本を読んで、ものすごく意を強くした(笑)。最近ぼくもよく眠れなくなってきて、何度も夜中に起きるから。

椎名 ぼくはもう(あきらめて)、精神科に通って眠り薬をもらってそれを飲んでとっとと寝ちゃってます。

五木 ほう、睡眠薬を。

椎名 あれはもう飲み込んでしまえばいいんですよね、睡眠薬を飲んでもいいんだと。(睡眠薬に)ちょっと抵抗があるじゃないですか。

五木 うん、ちょっとありますね。

椎名 でもいまは、早い話が睡眠薬で自殺はできないんですよ。そういうふうな薬に改良されているんです。(30代から続いてきた不眠を)薬でコントロールするのもひとつの方法だと達観してます。

五木 旅に出たときはどうなんですか?

椎名 旅をしているときのほうが眠れるんですね、旅先で一人のときは、別に何時に起きてもいいわけですから。一人でないときは、翌日待ち合わせに遅れてはいけないと緊張しますから眠れなくなるんですけど。

五木 ぼくはふだんだいたい夕方からずっと仕事をして、朝の5時か6時くらいに寝るんです。そして午後の2時に起きるというのが、毎日のリズムなんですが。

椎名 なるほど。(そのリズムは)いいですね。

五木 ところが今日は午前中に目が覚めた。椎名さんが「青春と読書」(集英社)に連載している「エンディングノートをめぐる旅」を読んでいたら、どんどん目が冴えてきましてね。ちょっと睡眠不足なんです(笑)。

椎名 それは恐縮です。

五木 旅は最近、いかがですか?

椎名 旅は相変わらず出かけていますが、あんまり長期の旅は、仕事もあるので控えるようにしてるし、なんか飽きちゃいましたね。

五木 そういうもんですよね。ぼくも昔はやたら旅をしてたんです。15年ほど前にも60代後半の頃で『百寺巡礼』の取材などで山寺などにも気軽に行っていた。室生寺の730段の階段なんて3往復ぐらいしてたんですが、最近、変形性股関節症なんて診断されて足が痛くなってね。いまは空想上の旅しかできないので、椎名さんのご本なんか読んでごまかしてる。

椎名 でも空想上の旅ができるというのは、相当な旅の経験と読書量があるからですよね。かなり贅沢な空想の旅をなさってるんじゃないですか(笑)。

五木寛之(いつき・ひろゆき):1932(昭和7)年、福岡県生まれ。作家。北朝鮮からの引き揚げを体験。早稲田大学露文科中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞。76年『青春の門 筑豊編』ほかで吉川英治文学賞。主な著書に、『朱鷺の墓』、『戒厳令の夜』、『風の王国』、『親鸞』(毎日出版文化賞特別賞)、『大河の一滴』、『人生の目的』、『運命の足音』、『他力』(英文版『TARIKI』は2001年度BOOK OF THE YEAR・スピリチュアル部門)などがある。02年菊池寛賞受賞。また『下山の思想』、『生きるヒント』、『林住期』、『孤独のすすめ』などのほか、最新刊に『七〇歳年下の君たちへ』。

椎名誠(しいな・まこと):1944(昭和19)年、東京生まれ。作家。79年『さらば国分寺書店のオババ』でデビュー。『哀愁の町に霧が降るのだ(上・中・下)』(81~82)、『あやしい探検隊』シリーズ(84年~)、『インドでわしも考えた』などの紀行文、純文学からSF小説、写真集など、幅広い作品を手がけている。90年に映画『ガクの冒険』を監督し、91年には映画製作会社「ホネ・フィルム」を設立して映画製作・監督として『うみ・そら・さんごのいいつたえ』(91年)、『あひるのうたがきこえてくるよ。』(93年)、『白い馬』(95年)などを製作。90年、『アド・バード』で日本SF大賞を受賞。『岳物語』『犬の系譜』(吉川英治文学新人賞)、『家族のあしあと』『そらをみてますないてます』などの私小説系作品も多い。

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