社会
Posted on 2019年08月05日 05:55

医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<慢性腰痛>「脳のドパミン放出で痛みはスッキリ」

2019年08月05日 05:55

 慢性的な腰痛に悩まされている人は少なくないだろう。「慢性腰痛」は腰痛が3カ月以上続いている状態のことを指している。最近の研究で、30代~50代の都心部の事務職で働く人に多く見られることがわかってきており、その理由として、ストレスやうつなどの「精神的要因」が挙げられる。ストレスや不安などにより、痛みの信号を抑える脳の仕組みが働きにくくなってしまうためだ。

 通常は、腰からの痛みの信号が脳に伝わると、脳からドパミン(ドーパミン)という神経伝達物質が放出される。すると、脳内でμ(ミュー)オピオイドという脳内麻薬物質が活性化して神経伝達物質のセロトニンやノルアドレナリンが作られる。これにより痛みの信号を脳に伝える経路が遮断され、本来は痛いはずの腰が、痛みを感じずにすむようになっている。

 しかし、ストレスやうつなどの精神的要因が長期間に及ぶと、脳内のドパミンなどが放出されにくくなり、痛みの経路を遮断する仕組みが働かなくなってしまう。つまり、ちょっとした痛みでも強い痛みに感じてしまうのだ。さらに、慢性腰痛は、ストレスの原因を特定できない状態が続くと、かえってストレスをため込むことになり、痛みが慢性化するという悪循環につながりかねない。そのため、医療機関では慢性腰痛の患者に対して精神的要因をチェックする「BS-POP」という質問票を利用して対応している。

 慢性腰痛の治療では、ストレスの原因を探り、解消や改善を目指すことが欠かせない。他にも、脳からドパミンが放出されるよう、適度な運動や楽しいと感じることを行うことも大切で、必ずしも患部の治療だけでは治らないことも少なくない。症状が改善されない場合には、痛み止めや、抗うつ薬、抗不安薬などを用いることもある。完治を目指すのではなく、腰痛とうまくつきあい、痛みを軽減させることがポイントになってくるのだ。

田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2026年09月14日 11:30

    AIは本当に人類を終わらせるのか。専門家のとある主張が世界を震撼させている。その「AI終末論」は、AI開発企業アンソロピックに勤めていた元研究員、ジェイコブ・コクソン氏によるもの。Xで「AI研究関係者の多くが、AIは今後10年以内に人類を破...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    事件
    2026年09月16日 20:30

    「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物「エトミデート」は、広島カープに大きな衝撃を与えた忌まわしいブツだ。元広島カープの羽月隆太郎氏にこれを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の罪に問われた会社役員・滝口涼介被告の初公判が9月16日に広島地裁で...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年09月17日 07:15

    20世紀最大級のミステリーと言われてきた、イギリス・スコットランドのネス湖に生息するという未確認動物(UMA)の「ネッシー」に、再び熱い視線が注がれている。いったいなぜか。一時期は目撃情報が激減し、専門家からは死亡説や、人間の活動を警戒して...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/9/15発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク