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記事全文を読む→夏八木勲 映画に起用した角川春樹との「時には飲み明かした仲」
映画、ドラマなど300本を超す作品に出演した夏八木勲。近年はいぶし銀の演技で名脇役として名を残し、膵臓ガンで帰らぬ人となった。角川映画の黄金時代、公私にわたり親交のあった角川春樹氏(71)が、知られざる役者バカ人生を語った──。
夏八木くんのような真面目な役者を私は知りません。彼の存在感、人間性はとてもピュアで、男らしい人でした。今の役者みたいに軽くないし、浮ついてませんから。二度と現れないタイプで、本当に惜しい男を亡くしたと思います。
最初に彼を起用したのは、1977年の映画「人間の証明」でした。五社英雄監督の撮った主演時代劇「牙狼之介」を観ていたし、NHK朝の連続ドラマ「鳩子の海」の脱走兵役で注目を集めたあとでしたから、スムーズに決まりました。俳優座養成所時代の同期で「花の15期生」と呼ばれた地井武男くんが「(夏八木は)言葉が足りない」とよく言ってました。確かに口数も少なくて自分から話しかけたり、電話をかけてはこなかった。でも質問にはきちんと答えるし、胸の奥に熱いものを感じさせる人でした。
撮影の合間でも常に体を動かしていました。乗馬と殺陣がとにかくうまかったですね。私の印象としては、年がら年中体を鍛えている人。それでいてサプリメントもとらず、食事にも気を遣いませんでしたが、非常にしなやかで頑健な体をしていました。どんな役が来てもこなせるのが、役者の務めと考えていて「野性の証明」(78年)でも主演の高倉健さんに挨拶したあと、一人で黙々と運動している。「戦国自衛隊」(79年)の時は、共演者で親友の千葉真一くんと2人、体を鍛えていました。
夏八木くんとは何年にもわたって毎月旅行もしていました。伊勢の生き神様と呼ばれて私をかわいがってくれた神道家の小泉大志命のいる神武参剣道場でパワーをもらう精神修養の旅でした。酒に強くて、ウイスキーやブランデーで飲み明かしたものです。
主演に抜擢した「白昼の死角」(79年)で、丘みつ子さん相手にベッドシーンを演じているんですが、ヘタクソでしたね(笑)。何かぎこちないんですよ。役は何でも器用にこなしたけど、唯一苦手だったんじゃないかな。
彼の個性が生きたのは、悪役でしたね。「白昼──」でチョイ役出演した私と知能犯を演じた彼の対決シーンがあるんですが、ものすごいオーラを感じて圧倒されました。
最もみごとな熱演は、私が監督した「天と地と」(90年)で見せた渡瀬恒彦くんとの競演シーン。背筋が総毛立つ感覚を受けたのは後にも先にもそれだけです。
その後、実は幻の出演作もありました。「笑う警官」(09年)の元警官のバーテンダー役を振ったんですが、スケジュールが合わなかった。非常に心残りです。
今でも感謝しているのは、千葉刑務所を保釈後に有志で開いてくれた「励ます会」のパーティで、私のコメントを求めて殺到する報道陣からボディガードをしてくれたことです。気がついたら、ホテルの会場入りする私を身を呈して守ってくれていて、ずっと受付でにらみを利かせてくれて。相手の立場に立って考え、行動できる人物でした。
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