社会

ウチの猫がガンになりました(10)期待したセカンドオピニオンも虚しく…「手術は無理。もう緩和ケアしかない」

 9月28日。

 S動物病院に紹介状を書いてもらったM医療センターでジュテを診てもらうため、タクシーで出かける。予約は15時。検査前なのでご飯を食べさせず、朝、水だけ少々。

 動物病院で検査の結果を聞いてから、1週間があっという間に過ぎていった。短かったような、長かったような。時間の感覚は失われていた。キャリーバッグの中のジュテは鳴き声もあげず、相変わらず大人しくしている。今日一日…祈るような気持ちである。

 医療センターは大きな通り沿いにあった。全面ガラス張りの、大きくてオシャレなクリニックといった外観である。入ると円形カウンターの受付。名前を言って手続きをしてから30分ほど待たされた。

 受付左の部屋に通され、最初にS先生と助手による診察があり、CTとMRIの前に動物病院で受けたのと同じエコー検査をやるという。部屋を出ていったん受付前で待つ。

 しばらくして、エコー室に呼ばれた。検査が終わり、続けてCTとMRIかなと思ったら、S先生は照明を落としたエコー室でA4判にメモしながら説明を始めた

「ジュテちゃんの状態はですね、肺に複数個のシコリがあります。小腸かどうかわからないけど、腹腔内にも何個か。大きさは2、3センチです。これが動物病院の細胞診でわかった上皮系悪性腫瘍の疑いのあるシコリです」

 先生は画像を指して教えてくれる。

「それぞれが関連したものなら、腹腔内のガンが肺に転移したか、もしくは肺ガンの肺内転移及び腹腔内への転移と思われます」

 肺は今後、咳や呼吸困難、胸水といった症状が出る可能性があるという。お腹のシコリによって食欲低下、体重減少、吐き気、下痢、元気がなくなるといった症状も出ると…。

「もっとはっきり診断するためには全身麻酔をしてCTをとり、肺のシコリの生検が必要ですが、そこまでやってもどうかと…」

 手遅れ? CT、MRIをやるまでもないのか。結果は動物病院の最初の診断とほぼ同じである。ジュテはもう手の施しようがないということか。僕は「そうですか」というのが精一杯、ゆっちゃんは無言だ。

「治療法は根治治療か、対抗的治療があります。でも、ジュテちゃんは小腸のところにできているシコリが腸に絡まっている感じで、オペは難しい。放射線を当てる治療法もありますが…」

 と言って、先生は治療法に×をつけた。さらに「抗ガン剤を使う方法もあります」と言うが、それも難しいようだ。

「ジュテちゃんの場合は対症療法、緩和ケアでしょうね。その日その日の症状に応じた対症療法しかないと思います」

 先生はエコーの画像をカチカチと動かし、助手は一言も発せず。我々は選ぶ言葉もない状態だ。やっとのことで「手術は無理ですか」と言ってはみたものの、もちろん本気で手術をやってもらいたいわけではなく、一縷の望みで…。そもそも、ジュテのお腹を切る姿を想像することすら辛いのだ。

 結局、手術どころか検査もやらない方がいいという、考えられる最悪の結果だった。どうして、こんなになるまで気が付かなかったのかと、ジュテにすまない気持ちで一杯になった。

 我々はキャリーバッグのジュテを連れて、病院を出た。

(峯田淳/コラムニスト)

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