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記事全文を読む→福島差別映画「A2-B-C」が国際的な“福島差別”を助長する
原発事故後の福島を訪れた主人公は鼻血を出し、倦怠感に襲われる──。あの漫画「美味しんぼ」騒動の最中に、ある映画が都内で封切りとなった。米国人監督が撮影したドキュメンタリー作品は、例の漫画よりもひどく福島県民を疲弊させるシーンに満ちていた。
その問題作は、「A2-B-C」というドキュメンタリー映画だ。日本在住13年の米国人監督、イアン・トーマス・アッシュ氏による作品である。
福島第一原発事故発生の11日後に、イアン氏は福島取材を決意。福島に住む人々を追ったものだ。昨年から日本各地で上映会が開かれ、まさに「美味しんぼ」の鼻血騒動最中の5月に都内映画館で公開となった。
記者もその作品を鑑賞したが、開始から数分後に福島に住む主婦が、こんな話をし始めるのだ。
「子供が鼻血を出したんです」
そこで場面が切り替わり、また別の主婦が続ける。
「息子が原発事故後、2度も大量の鼻血を出したんです。頭を切った時のような血でした。しかも、全身に発疹が出ました」
漫画の主人公、山岡士郎が訴えた症状とウリ二つである。これは「美味しんぼ」の原作者、雁谷哲氏(72)自身の体験に基づいた表現だったとされている。漫画では、実在の学者が登場して、放射能を帯びた微粒子が細胞に作用して、鼻血につながったとする説を論じている。
もちろん、この放射能微粒子説は学術界において異論どころか間違いとさえ指摘する学者もいるほどだ。
ところが、この映画ではこうした専門家が登場して科学的な検証をするわけでもなく、ひたすら住民の証言が続いていく。
前述の鼻血と発疹の症状が出た子供を持つ母親は、映画中でこう続けるのだ。
「カゼをひいて子供を病院に連れて行ったら、血液検査をされた。カゼだけで検査をすることなんてなかったのに‥‥。結果は白血球が減っていた。でも、病院ではこちらが聞きもしないのに『これは原発事故の影響ではない』と言われた。知り合いの看護師は事故後、こういう事例が多いと言っていました」
事故後に放射能の恐怖におびえ、病院も行政も信じられないという不安に駆られる住民心理は理解できる。
しかし、この映画は何の検証もなしに、ただ住民の不安の声を垂れ流し、風評をバラ撒くだけなのだ。
そもそも、タイトルの「A2-B-C」も甲状腺検査の診断基準レベルなのだが、その危険度は提示されない。「A2」と診断された子供が44%まで上昇していることが主婦の証言で明らかにされる。映し出された診断書には「20ミリ以下ののう胞があるが、二次検査の必要なし」と書かれていた。それでも、映画では「A2」と診断された子供にこう語らせているのだ。
「僕たちは皆、白血病になって死んでしまう‥‥」
日大歯学部准教授(放射線防護学)の野口邦和氏はこう話す。
「のう胞だけではガンにならないので心配はない。チェルノブイリが比較対象となることが多いが、福島の被曝量とは桁が違う。確かに、すでに被曝してしまった量を低減させることはできませんが、ただ不安をあおるようなこともよくない。正しい知識を持って、きちんと検査を受けることが重要なのです」
この映画の最後には、取材に協力した福島県民の家族の姓が記される。ところが、その一家の一員でない人の証言シーンもあり、証言者がいったい誰なのかは不明なまま終わってしまう。名もなき人たちの証言を集めた貴重な映像かもしれないが、海外の映画祭で受賞歴があることを考えれば、国際的な「福島差別」を助長するのではと不安になってしまうのである。
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