政治

中国「偵察気球」の脅威 自衛隊統合司令官を新設で防衛力強化

 さる2月4日、米軍は、米国本土の上空を飛行していた中国の偵察気球を戦闘機により撃墜したと発表した。さて、同じことが日本で起きたらどうなることやら。防衛費が大幅に上がるのであれば、やることはやってほしいものだが──。

 米国における偵察気球飛行事案を受け、磯崎仁彦官房副長官はこう発言している。

「令和2年6月や令和3年9月に、わが国上空で飛行物体が目撃されていることは承知しているが、詳細は今般のアメリカでの事案との関連性も含め、引き続き分析を進めていきたい」

 元防衛省の情報分析官で、軍事・情報戦略研究所の西村金一所長が解説する。

「米軍の戦闘機が撃墜した気球について、中国政府は『民間の気象研究用の気球』と主張していますが、通常、気象状況を観測するラジオゾンデと呼ばれる気球は、ただ偏西風任せで飛んでいくだけです。しかし今回の気球をよく見ると、太陽光発電のパネルがあり、プロペラもついています。つまり、“ドローン”のように自由自在に操縦できるということです。米国政府の見解通り、偵察気球と考えて間違いないでしょう」

 冒頭の磯崎官房副長官の発言にもある通り、中国の偵察気球と思しき飛行物体は、これまでに何度も日本の上空を飛行し、日本政府、防衛省は、それを把握していたというのだが‥‥。

「偵察の目的について、軍事関係者の中には、電波受信による情報収集を挙げる人もいますが、その可能性は極めて低いと思います。というのも、電波を受信する受信機はかなりの重量なので、それを装着すると、そもそもバルーンを飛ばすことができない。すぐに落下してしまいます。一般的に偵察衛星で地上を撮影する場合、数百キロ上空から空撮する。実は、中国軍のスパイ衛星のカメラの性能はあまりよくないようです。バルーンであれば、数十キロ上空から地上を撮影することができるし、その目的は、鮮明な写真を撮るためだと思います」(西村氏)

 中国による上空からの“盗撮”をこのまま野放しにしていると、今後、日本にとっても大きな脅威になることだろう。

「中国は偵察気球を使って、陸・空・海の自衛隊や米軍の動向を探っていると考えられます。例えば、仮に今後、中国が台湾に侵攻したとすると、自衛隊と米軍はどのような部隊を配備して、対抗策をとってくるのかなど、来るべき有事に備えて軍事衝突のシミュレーションを行っていることが想定できます。米軍は、中国の偵察気球をすぐに撃墜しましたが、日本は中国にとって“スパイ天国”。やりたい放題ですよ」

 こうした日本の弱点を指摘して、西村氏が続ける。

「現時点での日本政府、防衛省の方針では、中国が領空侵犯をしてきた場合、戦闘機のスクランブル発進ができたとしても、撃墜することはできません。戦闘機を飛ばすだけでは意味がありません。なぜなら、大事な日本の防衛情報は中国に根こそぎ取られるわけですから」

 だが、日本政府、防衛省も決して手をこまねいているわけではない。中国の偵察気球を米軍の戦闘機が撃墜した2日後の2月6日、政府は防衛省内に「統合司令部・統合司令官」を設置すると発表した。

 西村氏が設立の背景について説明する。

「これにより、今後は陸・海・空の自衛隊を統括的に指揮することができるようになります。現在も防衛省内には統合幕僚長という要職があり、世間のイメージでは陸・海・空を束ねて統率していると思われているかもしれません。ところが実質的には『まあまあ、同じ自衛隊なんだから、皆さん、仲よくやりましょう』という、単なる調整役、スポークスマン的な役割でしかありません。戦前の日本軍と同じで、今も陸・海・空の自衛隊は、縄張争いのようなことをやっているんですよ。けれども、日に日に高まっている中国の脅威に対しては、組織内での足の引っ張り合いはやめて、陸・海・空が情報を共有し、連携して、立ち向かっていかなければならない。今回の『統合司令部・統合司令官』の新設は、その決意の表れと言えるでしょう」

 早ければ来年には新設されるという。米中の覇権争いが熾烈化する中で、国家・国民を守る防衛省にはもっと変革を願いたいものだ。

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