8月末にドジャース大谷翔平の愛犬デコピンが始球式に登場したのが遠い昔のように感じられるほど、大谷の記録更新ラッシュが止まらない。前人未到の「50-50」がいよいよ、現実味を帯びてきたのだ。
そのせいでで忘れがちだが、大谷の今シーズンは、損傷した右肘を「自分の靱帯と人工靱帯で修復、補強したハイブリッド手術」後のリハビリ中である。大谷はなぜそんな選手生命がかかった「ハイブリッド手術」後に、デコピンを飼い始めたのだろうか。
昨夏から大谷の体調を気遣い、渡米していた真美子夫人との結婚を決意したことが大きいのだろう。
「デコピン」の犬種、コーイケルホンディエはオランダ原産の猟犬で、警戒心が強い。あのフッサフサ、モフモフの尻尾を振って、カモをおびき寄せるため、英語の「おとり」を意味する「デコイ」という俗称で呼ばれている。飼い主とのボール遊びや走り回ることが大好きな、賢くて活発な犬種だ。
「デコピン」がブレイクする前からコーイケルホンディエを飼っている「犬友」によれば、無駄吠えをせず、飼い主の指示に合わせて遊ぶのが上手い。その一方で、子犬の時にしつけを徹底し、毎日2回、2時間以上の散歩、そして飼い主との信頼関係を築いておかないと、どうにも手に負えなくなるそうだ。シーズン中、遠征で自宅を不在にしがちな大谷に代わり、真美子夫人を守ってくれるヤンチャな相棒としては申し分ない。
身長193センチの大谷が抱っこしていると小型犬のように見えるが、柴犬よりひと回り大きく、ボーダーコリーやサモエドと同じサイズの中型犬である。大谷がそんな希少種のデコピンを選んだのは、愛犬家ならではの深慮と言われている。
岩手県奥州市にある大谷の実家ではかつて、ゴールデンレトリバーの「エース君」を飼っていた。日本国内でも手に入れやすいゴールデンレトリバーやラブラドールレトリバーをもし大谷が再び飼い始めれば、レトリバーの子犬を安易に買い求める社会現象が起きることは、容易に想像がつく。
このため大谷は、自分の真似をして子犬を購入し、大きくなって手に負えないと捨てられる不幸な犬を生み出さないよう、ペットショップでは「手に入りにくい犬種」を探していたというのだ。
大谷の懸念は当たり、愛犬家のネット掲示板やペット検索では、MVP受賞時に「デコピン」を披露した昨年11月以降、「関西でコーイケルホンディエを買えるペットショップ」「九州にコーイケルホンディエのブリーダーはいるか」などの問い合わせが目につくようになった。先の犬友によると、
「コーイケルホンディエと誤解させるような写真を掲示し、ビーグル犬やジャックラッセルテリアを法外な値段で売りつけようとしている業者もあります」
「偽デコピン」を販売する業者も業者だが、大谷と同じ犬を飼いたいと安易に考える「エセ愛犬家」ほど、小型犬のビーグルやジャックラッセルテリアと、中型犬の「デコピン」の区別などつかないのだろう。
大谷と同じ犬種にこだわらずとも、ドジャースの日本語版公式ネットショップでは、ペット用の大谷ユニフォームやハーネスが販売されている。愛犬に大谷のユニフォームを着せれば、気分は「デコピン」だ。なぜか犬用よりも先に猫用グッズが、すでに完売御礼となってしまったのだが。
(那須優子)