年末年始、多くの人が実家に帰省し、家族との時間を過ごすものだろう。しかし一方で、「実家には帰りたくない」と感じる、いわゆる「帰省うつ」に陥る人は少なくない。本来は安らげるはずの実家が、なぜ憂鬱の原因になってしまうのか。都内在住の30代男性は、帰省うつの理由についてこう語る。
「兄弟の子供が増えすぎて、実家に帰っても居場所がないんです。元々、僕の部屋だった場所は甥や姪が泊まるのに占領されてしまい、僕は物置に毛布を敷いて寝るしかありません。しかも、お年玉を渡さないといけないので、金銭的にも厳しい状況です。実家に戻っても親から『結婚はまだか』『彼女はいないの?』と聞かれて、ストレスがたまるだけなんですよね…」
独身者にとって家族構成が変化した実家は、かつての「自分の居場所」が失われたところになりがちだ。他の兄弟の家族との距離感に悩む人も多く、親戚からの詮索がさらにストレスを感じさせることに。
では帰省うつを抱える人たちは、年末年始をどこで過ごしているのだろうか。都内在住の40代男性は次のように話す。
「近くのスナックですね。スナックに行くと同じように独り身の人がたくさん来ているので、妙な安心感があります。ここでカウントダウンまで過ごし、営業終了後は店の女の子やお客さんと皆で初詣に行くのが毎年の恒例です」
都心の場合、年末年始は休業する夜の店が多いが、地域密着型のスナックは大晦日も営業していることがある。年越しをひとりで過ごしたくない独身者の、憩いの場になっているのだ
一方で、一人旅やホテル滞在を選ぶ人も増えている。実家ではなく、遠方の宿泊施設で非日常を味わうことで、年末年始の喧騒から解放されると感じるのだ。旅行ライターが解説する。
「近年では都心のホテルが『おひとり様』向けのプランを積極的に打ち出しています。例えば、部屋で映画を楽しむプランや、豪華な一人用ディナーが付いたプランなどです。値段は平日より高めですが、独身でお金に余裕のある人たちに人気が高いですね」
家族との再会を喜ぶ人がいる一方で、それを負担と感じる人がいる。かつては当たり前だった「家族全員が実家に集まる年末年始」というスタイルは、時代とともに変化しているのだ。
(旅羽翼)