近年、水商売の現場で起きる「男女トラブル」が凄惨な事件に発展するケースが、あとを絶たない。とりわけ庶民的で親しみやすいはずのスナックで、血なまぐさい事件が相次いでいるのだ。
「またか」と思わされたのは、今年3月25に起きた西東京市のスナックでの事件。地下1階にある店舗で、30代の女性店長と40代の男性が血を流して倒れているのが見つかった。女性はその場で死亡が確認され、男性は病院に搬送されたが、意識不明の重体だった。警視庁の発表によると、2人は元夫婦とみられる。
この手の事件がスナックで多発するのはなぜなのか。都内でスナックを切り盛りするママはこう語る。
「キャバクラは会社の接待や経費で来るお客が多いけど、スナックは地元の人間が、自腹で毎日のように来る。距離が近くて会が話も濃密になるから、関係がこじれやすいんです」
キャバクラやガールズバーと違い、スナックでは「交際」や「結婚」まで発展するケースが少なくない。それだけに、思いが通じなかった時の落差は大きい。ママが続ける。
「スナックの女の子は、キャバ嬢みたいにスレてないって言われます。時給が安いから、営業も本気になっちゃう。それが色恋営業に見えて、男は『本気で好かれている』と勘違いするんです。裏切られたと思ったら、恨みに変わるのは早いですよ」
スナックで働く女性の多くは、地元の女性や主婦層が中心。だからこそ、恋愛や金銭が絡む「泥沼案件」になりやすい。
客との距離が近いスナックは、心のよりどころを求める男性にとっては格好の居場所となる。しかしその一方で、感情のもつれが殺意に変わる危うさも孕んでいる。
「色恋で引っ張る子もいれば、本気で付き合ってしまう子もいる。お互いの境界線が曖昧なまま深みにハマって、最後は事件になるっていうのが水商売の怖いところですよ」(夜職経験のあるライター)
夜のスナックで起きる愛憎劇の裏には孤独や嫉妬、執着といった感情が渦巻いている。
(カワノアユミ)