鹿島アントラーズが2020年以来の6連勝で、ガッチリと首位をキープした。
第16節の「国立決戦」となった鹿島VS川崎フロンターレの試合は、鹿島が2-1で逆転勝ちを収めた。この試合では随所に「鹿島らしさ」が見られた。
試合開始7分、川崎に先制される。その後も劣勢が続くがなんとか守り切り、前半終了間際のアディショナルタイムに、舩橋佑のJリーグ初ゴールで同点に追いついた。後半62分、レオ・セアラが筋肉系のトラブルで交代するが、代わりに入った田川亨介が65分に逆転ゴールを決める。その後は堅い守りで逃げ切った。
この試合での「鹿島らしさ」とは、その勝ち方だろう。前半は劣勢が続く中、危険な時間帯といわれる終了間際に同点に追いついた。後半に入って、チームの得点源であるレオ・セアラが交代しても、代わりの田川が決勝ゴールを決める。点の取り方、誰が出ても鹿島のサッカーのクオリティーが変わらないから田川のゴールが生まれた。ハッキリ言って試合内容では川崎が主導権を握り、チャンスは多かった。それでも決めきる力の差で勝ってしまう。この6勝中の名古屋グランパス戦でも、前半は押し込まれる時間が多かったが、後半のセットプレーで先制すると、その1点を守り切った。それが強い時の鹿島のサッカーである。
ケガ人が多く、先発メンバーを毎試合のように入れ替え、試行錯誤していても勝負にこだわり、誰が出ても鹿島らしさを出して勝つ。そういう試合ができるようになってきた。
ただ、鹿島と鬼木達監督が目指すものは、もっとレベルの高いサッカーだ。それは「憎たらしいほど強い」と言われた鹿島サッカーの復活に、鬼木監督が川崎時代に見せた、攻撃的で魅力あるサッカーをミックスさせることで実現する。
だから鬼木監督は試合に勝っても「まだまだ、やらなければいけないことがたくさんある」「もっとできるはず」と満足していない。ここまでは「鹿島らしさ」というか、鹿島のサッカーを復活させただけで、まだまだ目指すサッカーにはほど遠い。
それでも鈴木優磨、柴崎岳、植田直通ら鹿島黄金時代を知る選手たちが、チームを引っ張っている。よりレベルの高いチームを目指すために、自ら手本となって妥協しないプレーを見せている。それが若い選手や移籍してきた新戦力に浸透してきた。現在、首位に立っている理由がそこにある。
それでも今の鹿島に、かつての黄金時代のような絶対的な強さはまだ感じられない。ただ、優勝を意識する秋に、どんなチームに成長しているのか。可能性を最も感じさせるチームであることは事実だ。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップ・アジア予選、アジアカップなど、数多くの大会を取材してきた。