巨人における長嶋茂雄監督の采配は独特だ。時に「長嶋カンピューター」などと言われるが、とある「癖」があったと、かつての巨人担当記者は言うのだった。
「ミスターが試合中に『代打、誰がいる?』と聞きました。例えば打撃コーチが3人の選手の名前を挙げると、ミスターは必ず最後に言った選手を選ぶ傾向がありました。最初の2人を覚えていないんじゃないか、という笑い話が出たほどです」
それはこんな感じだった。打撃コーチが、
「準備ができているのは吉村、岡崎、それにデーブです」
と答えるとミスターは、
「じゃ、デーブ」
とあるコーチは、こんなことを話してくれた。
「ミスターは必ずそう言うんだよ。だから、使ってほしい選手を最後に言うことがあった」
普通ならばいちばんいい打者を最初に言う。「ここは岡崎ですよ。あとは吉村とデーブです」とか。しかしミスターは「ん~、デーブ」などと選んでしまうため、コーチは「策」を講じるのだった。
なんともミスターらしいエピソードである。
(大田了)