国会会期末(6月22日)が近づく中、自民党内からは「立憲民主党が内閣不信任案を提出したら、石破茂首相が採決を待たずに衆院解散・総選挙に踏み切る」との、強気の発言が相次いでいる。衆院では野党が多数を占めており、提出されれば可決される可能性が高い。なぜ強気の発言が出るのか。
コメ不足をめぐる小泉進次郎農水相のパフォーマンスもあり、自民党の参院選情勢調査で、与党が過半数を維持するための50議席を上回る、との「追い風」が背景にあるようだ。
立憲民主党の野田佳彦代表が不信任案提出を渋っているのは、不人気の石破首相を相手に戦った方が得策だ、との皮算用があるからだ。石破政権の内閣支持率は、黄色信号が灯ると言われる30%を切るケースが相次ぎ、野田氏の思惑通りの展開になっていた。
ところが小泉農水相の誕生で、民放テレビ局のワイドショーが「小泉劇場」を連日のように伝える中で、空気が変わった。
TBSをキー局とするJNNの最新調査では、石破内閣の支持率が前回の調査から上昇し、34.6%だった。自民党の支持率も上昇した反面、国民民主党が3.4ポイント下落した。
そこで永田町で出回っているのが「参議院選挙の情勢調査の概要」と題する文書だ。5月中旬に実施したもので、自民は改選52議席のうち49議席を維持し、前回調査(4月11日~13日)に比べ、2議席増えた。非改選を含め、現有114議席から111議席へとやや減るものの、公明党と合わせて136議席となり、過半数(125議席)を上回る。この調査は小泉氏就任前のものであり、自民党関係者は次のように語るのだった。
「今やれば、さらに議席が増えるかもしれない。間違いなく党幹部や選対関係者に配られているのと同じ資料だ」
石破内閣の不人気から50議席に届かず、過半数割れするのでは、との悲観論が自民党内には出ていたため、石破首相や森山裕幹事長を元気づける数字となった。
これを受けて、石破首相や森山幹事長は「参院選で消費減税を公約することはない」と断言し始めた。もっとも、先の自民党関係者は、
「最近の電話調査には偏りがあり、有権者の声を反映していない。この調査を信じると選挙では手痛い目にあうので、気を付けた方がいい」
いったん緩んだ雰囲気を、引き締めることができるか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)