セ・パ交流戦で、思わぬ「場外ファインプレー」が展開された。京セラドーム大阪での広島×オリックス戦(6月4日)の試合後、なんと「応援歌の交流」が。広島ファンとオリックスファンが肩を並べ、「バファエール」のリズムに合わせて声を合わせる、そんな光景が繰り広げられたのである。
まず驚かされたのは、Xに投稿された動画だ。JR大阪環状線の大正駅前や京セラドーム周辺の広場で、広島のユニフォームを着たファンがひと塊となり、オリックスファンに混ざって「バファエール」を見事に歌い上げる。歌詞やリズム、おなじみの「栄光と挫折を何度と繰り返そうと…」のフレーズを、高低の掛け合いまで完全コピー。オリックスファンからは「すごすぎ」「どんだけ練習してきたんや(笑)」という声が上がるなど、かなり練習を重ねてきたことを物語っていた。
そもそも「バファエール」は、オリックスがチャンス時にスタンドを一気に盛り上げるための応援歌だ。冒頭でトランペットのファンファーレに「Oh」という掛け声を合わせ、その後「栄光と挫折を何度と繰り返そうと これからも共に歩み止めることなく…」と歌う構成になっている。奇数小節は全員で歌い、偶数小節は高い声(女性パート)と低い声(男性パート)に分かれて掛け合うため、その迫力あるハーモニーが選手の士気を大いに高めるのが特徴だ。本来ならオリックスの応援席で響くはずのテーマを、あえて他球団のファンが同じ熱量で再現したことが、なによりも印象的だった。
交流戦の醍醐味は、ライバル同士のファンが同じ球場で自由に行き来できる点にある。だが今回はそれをさらに一歩進め、応援歌を「相互にシェア」する形になった。動画を見た野球ファンが「球団は違えど野球愛は同じなんだな」「他チームの応援歌をここまで完コピして歌うなんて粋すぎる」とコメントしたのは納得だ。
オリックスファンが快く広島ファンを迎え入れ、手拍子や掛け声で応える姿が見られた。両チームのファンの距離が一気に縮まる好機となった。実際に歌詞の切れ目で披露される「お約束の掛け声」やタイミングは完璧で、まるで応援団そのものが移動してきたかのような完成度だったのである。
今回の一幕は、単なる「応援合戦」を超えて、プロ野球文化の懐の深さを改めて証明した。もちろん試合の勝敗はあるものの、その裏にあるファン同士の連帯感や、応援歌を介したコミュニケーションの楽しさが、野球観戦をより特別なものにしてくれる。両球団のファンが肩を並べ、声を揃えて歌う姿は、スポーツを通じて生まれる一体感を象徴していた。
オリックスファンにとっては、自分たちが大切にしてきた「バファエール」を他チームのファンにも喜んで歌ってもらえた喜びがあり、広島ファンにとっては新たな応援の楽しみを見つける機会となっただろう。これを機に、今後の交流戦では「他球団の応援歌に挑戦」というムーブメントが起きるかもしれない。
勝敗を超えた一体感は、夏本番を迎えたプロ野球シーズンをさらに熱く彩ることだろう。
(ケン高田)