関東甲信地方が梅雨入りしたとみられる、と気象庁が発表した6月10日、広島カープはロッテ戦を1-6で落とした。7回までロッテの先発サモンズに無安打に封じられた打線は8回、先頭の上本崇司が左中間へ放った二塁打が、唯一の安打。完封こそ辛うじて阻止したものの、打線は梅雨特有の湿った空気に包まれた。
今や広島打線の主軸を担うファビアンは、6月10日終了時点で打率3割1厘、6本塁打、26打点をマークし、セ・リーグ打率ランキング2位に位置している。27歳の外国人選手としては近年、稀に見る高い順応力で、広島の新戦力として「大当たり」と評価されている。当然ながら、交流戦でも大きな期待が寄せられていた。
ファビアンの交流戦前の成績は打率3割7厘、5本塁打、23打点。二塁打12本を含む59安打を放ち、打線に安定感を与えた。そして6月3日からのセ・パ交流戦では、レフトの守備に就いた3試合は全て勝利しているものの、指名打者(DH)で出場の4試合は1勝3敗と負け越しており、打率1割1分1厘、0本塁打、0打点の結果にとどまっている。
となれば「ファビアンは守備に就くと打つ」「DHでは本領発揮できない」という「ファビアン守備ありき説」がクローズアップされる。守備に就いて体を動かすことで、打席に入った際のスイングが安定するというもので、かつて西武のカブレラやヤクルトのバレンティンにも同様のエピソードがあった。交流戦の日程はタイトで、相手投手のタイプが異なるため単純比較は難しいが、ここまで成績に大きな開きがあると、DHに原因があるのではないかと考えたくなる。
数字の安定感こそが、ファビアンの最大の強み。守備負担を軽減するDH起用はひとつの選択肢だが、外野守備から打席に入ることで得られるリズム感の効果については、今後のデータ蓄積と検証が待たれるところ。
もっとも、これだけ打撃成績に違いが生じるのであれば、坂倉将吾や末包昇大らをDHに起用するという布陣も十分、検討に値するのではないだろうか。
(ケン高田)