女性問題で窮地に立たされ、一度は背水の陣を敷いた男が今季「ドラ1の誇り」を体現する存在へと生まれ変わった。
広島カープの中村奨成は、過去の女性スキャンダルで球団内外から厳しい視線を浴び、一時はトレード候補に挙がった。しかし今季、驚異的な飛躍を遂げ、チームの希望となっている。
広陵高校時代、2017年夏の第99回全国高等学校野球選手権大会で、PL学園・清原和博の5本塁打の記録を32年ぶりに塗り替える、1大会6本塁打をマークしたスター候補として、同年ドラフト1位で広島に入団。ところがプロ入り後、7年間は大した結果を残せず、1軍通算成績は打率1割9分2厘、2本塁打、11打点だった。昨年までは「素行不良」と報じられ、たび重なる女性問題を起こす問題児。一時はチーム編成担当者から「広島だから成しえた救済」と指摘されるほどだった。
その中村が今季序盤の17試合で打率3割6分7厘と抜群のスタートを切り、4年ぶりの本塁打を放って覚醒。その後も27試合に出場して打率2割8分2厘、22安打、1本塁打、4打点と安定した活躍で、チームを牽引している。地元出身の外野手として、鳴りを潜めた猛打が再び、マツダスタジアムのスタンドを沸かせているのだ。
昨秋以降、中村は打撃改造に注力。プロの速球に対応すべくオープンスタンスに変更し、バットを寝かせてミートゾーンを広げる新フォームを導入した。加えて今季は守備登録を捕手兼外野手から外野一本に絞り、守備位置を固定したことでトレーニングの集中度が高まり、その成果が打撃成績にも明確に表れている。
さらに今季の変化は「左手薬指のシリコンリング」と「寮退寮」の動向だ。5月20日、練習中に中村が左手薬指にリングを着用していたことがXで拡散。昨年までは大野寮に寝泊まりしていたが、最近になって退寮し、ひとり暮らしを開始したことが広島のFM番組で報じられた。これが結婚あるいは婚約説が出た理由だ。真相は本人の口からまだ語られていないが、「本命」の存在がメンタルとパフォーマンスを支えている可能性は高い。
今年1月、チームでは林晃汰が中学時代の同級生と2021年6月に結婚していたことを公式発表。さらには野間峻祥、大盛穂、矢野雅哉の3選手、そして野村祐輔コーチ兼アナリストも結婚を公表する「結婚ラッシュ」に沸いた。プライベートの充実がプレーに好影響を与えているようだ。
過去のトラブルを反省して乗り越え、打撃フォームの改造と私生活の変化を糧に、再起を図る中村。ドラ1としての責任感を胸に、「またか」というスキャンダルを起こすことのないよう…。
(ケン高田)