ミスタープロ野球は、酒席でもすこぶる破天荒だった。
それは長嶋茂雄の巨人第二次政権時のこと。宮崎での春季キャンプ中、食事をしてから二次会でカラオケスナックに繰り出すことがあった。プロ野球メディア関係者が振り返る。
「だいぶ酒が入った頃合いで、同行した報道陣が『監督、何か歌って下さいよ』とリクエストすると、ミスターが歌ったのはディック・ミネの『旅姿三人男』。まぁ、はっきり言って、お世辞にもうまいとは言えない歌いっぷりでしたけどね」
そして歌い終えたミスターは、不可解な行動に出る。なんと壁にガンガン、頭を打ち付け始めたのだ。記者たちが「監督、何やってるんですか!」と驚いて止めに入ったのは言うまでもない。それほど酔っていたということだろう。
実は酔っ払う前、ミスターは報道陣を喜ばせようと、自らパフォーマンスに及んでいた。プロ野球メディア関係者が続ける。
「担当記者が先にスナックに行って、あとからミスターが来ました。すると頭に兎のようなフサフサの毛の帽子をかぶって、どういうわけか、ビートたけしのマネをする。『コマネチ!』と、例の股間をクイクイやるポーズをしながら店に入ってきたわけです」
グラウンドではとても見ることができない、超貴重な姿だが、謎のフサフサ帽子について、ミスターはこう説明していたという。
「んー、この間、ロシアに行った時に買ったんですよ」
(大田了)