自民党が参院選に向けて、中国系動画投稿アプリ「TikTok」上で公式アカウントを始めると表明した。アメリカでは「TikTok」の親会社である中国企業「バイトダンス」がアメリカ事業を売却しなければ、アメリカ国内でアプリを実質的に禁止する法律が1月に発効するなど、規制の動きが強まっているのに、だ。
6月4日に都内で「TikTok」が開くイベントに参加した自民党の平井卓也広報本部長は、参加する理由について「若い人への訴求力がある」と述べた。
安倍晋三政権時代は、若者層の自民党支持率が高かった。安倍元首相が若年層対策に力を入れていたこともあり、高校生、大学生どちらの就職内定率が過去最高となり、失業率も低かった。だが、岸田文雄政権や石破茂政権になって、若者層の自民党支持は低下する傾向にある。
報道各社の世論調査でも、30代以下の若者層の自民党支持率は低く、国民民主党だけでなく、れいわ新選組よりも支持率が低い結果が出た調査もあった。自民党内では「れいわショック」と言われた。
このため、若者層が多く使う「TikTok」を活用することで、彼らに自民党の訴えを浸透させたいとの思惑があるとみられる。
アメリカのトランプ大統領は昨年の大統領選で「TikTok」を活用したことで、若年層の票獲得につながったとして、「思い入れがある」(NBCテレビのインタビュー)と述べており、法律の執行を停止する大統領令に署名していた。
ただ、アプリを通じて中国政府に利用者の個人情報が流出している、との懸念をアメリカ議会が抱いたように、自民党が選挙対策のためだけに「TikTok」を始めることについて、
「石破政権はただでさえ『親中』とみられているのに、『TikTok』まで使い始めると、そうした批判に反論できなくなる」(自民党内の保守系議員)
それでも手を出すということか。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)