石破茂首相をはじめ、自民党の政治家たちが連休を利用して海外に出ているが、国内では作家でジャーナリストの門田隆将氏が「凄まじい現象が起こっている」とXに書き込んだように、自民党系の候補が市長選で相次いで負けている。4月20日の「ミニ統一選」で、その傾向は顕著に表れた。
「ミニ統一選」では14県で16市長選が行われた。与野党の対決となった福島県郡山市長選、茨城県筑西市長選では、野党系候補が当選した。
郡山市長選では新人で立憲民主、国民民主、社民の各党県連などから支持を受けた前県議が、自民党郡山総支部の推薦を受けた元県議らを破った。筑西市でも立憲民主党の前県議の女性が、自民党系の前市議に21票差で競り勝っている。
また、埼玉県秩父市長選では、新人の前市議が再選を目指した自民、公明推薦候補を、接戦の上に下した。新潟県糸魚川市長選でも、元教員が自民党の市内3支部から推薦を受けた前市議会副議長を358票差で退け、初当選したのである。
門田氏は「自民党が保守ではなくなった今、『下野』は当然」と厳しく指摘しているが、自民党にとっては6月の都議選、7月の参院選に向けての不吉な前兆といえる。
こうした苦境を受けて、参院自民党や公明党からは消費税の軽減税率引き下げなどを求める声が出ているが、すでに立憲民主党の野田佳彦代表が軽減税率の引き下げを1年間限定で0%に引き下げることを公約に盛り込むとしており、後手の印象を受ける。
石破首相は一時、「政権を失うぐらいなら…」と税率引き下げに傾いたものの、財務省寄りの森山裕幹事長らに止められ、今は実施しない方針だ。
だが「ミニ統一選」の結果に見られるように、自民党への逆風は吹いており、このままでは過半数割れまで進みかねない。石破首相ら自民党議員が余裕を持っていられるのは、この連休までかもしれない。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)