通常国会終盤の焦点である石破茂内閣への不信任決議案提出をめぐり、立憲民主党の野田佳彦代表が「見送る調整に入った」と、6月10日付の毎日新聞が報じた。
石破首相が、6月15日からカナダで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)の前後に、野党側が求めるアメリカとの関税交渉を説明する与野党党首会談に応じる姿勢を示しているため、「不信任を突き付ける理由が薄れたと判断したとみられる」という。
野田氏が不信任案に慎重なのは、当初から言われていたことだ。毎日新聞はその理由として、衆参同日選となっても野党の選挙協力で一致できる見通しが立っていないことを挙げた。他にも、立憲民主党は昨年秋の総選挙で新人議員が多く誕生したものの、選挙基盤が脆弱なため、同日選で敗北する可能性が高いことがある。
野田氏はこれまで、年金制度改革関連法案の提出を政府が見送れば、不信任案提出の理由になる考えを示していたが、立憲の主張を取り込む修正で自民、公明両党と合意した。これが野田氏らが不信任案提出に尻込みする「最大の理由」と言っていい。
というのも、厚生年金を活用して基礎年金(国民年金)の底上げを図る修正案に対して、立憲民主党への抗議が党本部への電話やメールで殺到したからだ。SNS上にも溢れ、党関係者は慌てふためいている。自民党や公明党も賛成したのだが、追及の矛先は修正案を突き付けた立憲民主党に向かっており、自公両党関係者はほくそ笑んでいる。
さらに他の野党からは、
「与党と野党第一党による密室合意だ」(日本維新の会・前原誠司共同代表)
との批判も出ている。
河野太郎前デジタル担当相が修正案を「毒入りあんこ」と形容したように、厚生年金の積立金を国民年金に流用しようとしている、との非難は強い。仮に同日選となったら、年金問題は大きな争点となることが予想され、立憲民主党にとって逆風となるのは必至。
「参院選でも大変なのに、同日選なんてとんでもない」(立憲民主党幹部)
これが本音のようである。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)