使用時のルールが変わり、利便性が下がったことで利用者からそっぽを向かれてしまった「青春18きっぷ」。今夏も発売されるが、どれだけの人が利用するのかは疑問だ。
もはやJR各社は、こんなものを発売したくないのかもしれない。そう思われる理由を、鉄道ライターが解説する。
「国鉄時代に増収を狙って導入されたきっぷですが、分割民営化されると、JR各社によって重要度は異なります。赤字を計上し続けているJR北海道にとっては、大切な収入源になっているといわれますが、通勤と駅ナカ事業が中心のJR東日本と、東海道新幹線で収益を上げているJR東海にとっては、『青春18きっぷ』は重要どころか邪魔な存在になっています。両社はさっさとやめてしまいたいことでしょう」
なるほど、確かに両社ともに、独自のお得なきっぷ販売に舵を切っているのである。
JR東日本はJR北海道とJR東日本の普通・快速列車が連続7日間、乗り降りできる「北海道&東日本バス」を6月20日から9月24日の間、販売。利用期間は7月1日から9月30日。価格は大人が1万1530円で、子供は5760円だ。
JR東海は「JR東海☆夏の乗り放題きっぷ」を販売する。これはJR東海圏内の普通列車と快速列車の普通車自由席が2日間利用できるものだ。発売期間は7月4日から9月9日までで、利用期間は7月19日から9月10日までだ。価格は大人が3900円で、子供は1900円。だだし条件があり、東海道新幹線の「EXサービス」で、熱海駅から米原駅までの間に着く東海道新幹線のきっぷを購入する必要がある。
利用条件を見ると、どちらもまるで「青春18きっぷ」だ。
「このきっぷを見ると、JR東日本とJR東海の思惑が透けて見えます。収益を他社と分ける『青春18きっぷ』ではなく、売り上げが全て自社のものになるものを販売したいんですよ。近いうちの『青春18きっぷ』の販売停止の布石と考えられますね」(前出・鉄道ライター)
2社が同様のきっぷを販売するとは、なんとも興味深い。
(海野久泰)