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記事全文を読む→プロ野球「オンオフ秘録遺産」90年〈江夏のシーズン奪三振354の新記録は王から達成〉
江夏豊の左腕から繰り出された剛速球は、打席に立つ王貞治の内角高めでグーンとホップした。
7回1死無走者、カウントはワンボールツーストライク─。
「三振することは恥ではない。中途半端に振ることが恥だと思っていた」
王がフルスイングした。勝負がついた。バットが空を切っていた。
1968年9月17日、甲子園球場での阪神対巨人20回戦、江夏が稲尾和久(西鉄)の持つ奪三振NPBシーズン記録353(61年)を抜く、354の新記録を達成した瞬間だった。
「コントロールがよかったですね。真っすぐ、カーブなどの変化球のどれも低めに決まっていた。思い切っていく。打たれても満足のいくピッチングをやろうと考えていました」
巨 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0=0
阪 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1=1
江夏は大阪学院大学高から66年、第1次ドラフトで4球団から1位指名を受けた。抽選の結果、藤本定義率いる阪神に入団した。 実はこの時、巨人は東映(現日本ハム)、阪急(現オリックス)とともに江夏を指名していた。
1年目の67年はろくにカーブを投げることもできないのに、12勝13敗の成績を挙げた。剛速球一本やりだ。
19歳の江夏は春季キャンプで、鋭く小さく曲がるカーブを習得した。
シーズンに入ると、三振を山のように築き始めた。開幕からイニングをはるかに上回る三振を奪っていった。前年は、剛速球だけで225三振を奪っている。それにカーブで緩急がつけば「虎に翼」である。
8月8日、中日球場での中日17回戦では、初回2奪三振を皮切りに4回を除いて計17奪三振。巨人・金田正一と並ぶセ・リーグタイ記録を作った。
そして、9月17日の巨人戦を迎える。阪神が首位の巨人を2ゲーム差で追っていた。試合前時点での奪三振数は345だ。
江夏はこう宣言していた。
「必ず王さんから三振を奪って新記録を決める」
王は62年から前年まで6年連続で本塁打王に輝いていた。同年も41本塁打で、7年連続へ独走していた。
江夏が王との対決にこだわったのは理由があった。
59年6月25日、プロ野球史上初となる天覧試合が催された。後楽園球場での巨人対阪神戦である。
この試合で、長嶋茂雄が村山実からサヨナラ本塁打を放ち劇的な幕切れとなった。
以後、村山は長嶋に対して魂の真っ向勝負を挑んだ。「龍虎の対決」と呼ばれ、阪神ファンだけではなく、野球ファンを大いに沸かせた。
村山は常々、後輩の江夏にこう言ったという。
「オレは長嶋、お前は王だ」
江夏もまた好敵手を求めていたのだ。
1回から飛ばした。1番・高田繁から三振を奪うと、3番・王を高めの真っすぐで三振に仕留めた。順調に奪三振を重ねた。
そして4回2死、王を速球でのけぞらせ、カーブでハーフスイングの三振に打ち取った。王がすごい形相で江夏をにらんだ。この試合、8個目の奪三振だった。
新記録達成‥‥江夏は意気揚々とベンチに引き上げた。だが、女房役の辻恭彦が信じられない指摘をした。
「オイ、新記録と違うで。タイや」
そう、まだ通算353個である。計算間違いをしていたのだ。
なんということか。しかし、江夏は瞬時に思考を切り替えた。
「次に(王と)対戦するまで三振を取らなければいい」
さて、次に王と対戦するまでには8人の打者がいる。当日のオーダーは次の通りだ。
1番・高田繁、2番・土井正三、3番・王、4番・長嶋、5番・柴田勲、6番・末次民夫(現・利光)、7番・森昌彦(現・祇晶)、8番・高橋一三、9番・黒江透修 江夏はそれまで三振を奪う投球をしてきたが、一転して、三振を避ける投球に切り替えなければならない。
首位攻防戦だ。確実にアウトを取る必要がある。自分のわがままを押し通した結果、打ち込まれる。それは論外だ。ましてや、予期せぬことが起きて三振されるかもしれない。
無謀な挑戦だ。だが、江夏はやってのけた。緩急を使い四隅に投げ分けた。まさに芸術的な投球である。
巨人の打者たちも新記録まであと「1」と知っているからバットを振った。記録の当事者として名前を残したくない。 5回に末次に安打を許したが、無三振のまま回は進んでいった。
問題は投手の高橋である。図らずも6回1死、1-2と追い込んでしまう。
江夏は「故意に四球を出せない。バットを振ってくれ」と祈った。高橋はど真ん中の真っすぐを振って、二ゴロに倒れた。
7回、先頭の土井を打ち取って王を迎えた。天才的まさに芸術的な投球無謀な挑戦に勝ったな技術で晴れの舞台を作り上げ、約束を果たした。王は3三振だった。
さらに江夏は延長12回裏、自らサヨナラ安打を放って1-0として花を添えたのだった。
巨人に対し139球で被安打3、無四球、奪三振は13個、通算358個となった。
同年、シーズン奪三振401個というものすごい記録を樹立した。今も破られてはいない。2ケタ奪三振試合は20を数えた。
当時と比較して、現在は投手の投球回数が激減している。今後もまず破られない不滅の記録であろう。
江夏は以後も、王とドラマチックな対決を繰り広げることになる。
(敬称略)
猪狩雷太(いかり・らいた)スポーツライター。スポーツ紙のプロ野球担当記者、デスクなどを通して約40年、取材と執筆に携わる。野球界の裏側を描いた著書あり
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