政治
Posted on 2025年08月20日 18:00

中国経済の「終わりの始まり」恒大集団の上場廃止は共産党支配に迫る歴史的転換点だ

2025年08月20日 18:00

 中国不動産危機の象徴とされてきた「恒大集団」が、ついに8月25日をもって香港市場から姿を消すことになった。2017年には時価総額が500億ドル(約7兆4200億円)を超え、中国を代表する不動産大手として栄華を誇った同社だが、21年に債務不履行に陥り、昨年1月29日の最終取引時点では株価が0.2香港ドルを下回り、時価総額は21億5000万香港ドル(約407億円)にまで急落した。

 単純に見れば「巨大不動産企業の経営破綻と上場廃止」という経済事件にすぎない。しかし、中国共産党の存在感や国の経済構造という広い視点で捉えると、この出来事は党の歴史104年の中で新たな転換点を示しているように映る。

 中国人にとって不動産は特別な意味を持つ。建国直後の毛沢東時代には「平等」を最優先に掲げ、富裕層から財産を没収し、国民には最低限の住宅が与えられた。5~7階建ての簡素な団地に、親子4~6人が1部屋で暮らす光景は当たり前だった。当時は土地や不動産を所有することは認められず、広い家に住むことは“夢”でしかなかった。

 その夢を現実に変えたのが、鄧小平による「改革開放」政策だ。都市再開発や工業団地建設の波に乗り、古い団地は次々にマンションへと姿を変え、中国人は「不動産投資」という新たなチャンスに目覚めていった。
 
 2000年代の初め、上海に駐在した私は隣のおばさんから、「ぼろアパートに住む老人の部屋の権利を一緒に買い取ろう」と誘われたことがある。その隣人は「老後の面倒を見るから」と説得して、世間知らずの老人の1DKの権利を次々に買取り資産家の階段を駆け足で登っていた。

 不動産投資の誘いはそれだけで終わらなかった。中国語の若い教師から投資を呼び掛けられたこともあった。安徽省出身で上海交通代大学を卒業したばかりの24歳の安美健クンだ。授業の合間に、「上海郊外の五角城に20万元(当時のレートで280万円)でマンションが売り出される。安いから、一緒に投資しよう」と、驚かせた。

 今では信じられない話だが、2000年代以降からコロナ禍(2020年)までの中国人は、「不動産は値上がり続ける」という神話を信じ、熱狂のように不動産投資に夢中になっていた。専門家が「バブル崩壊は近い」と警告しても、多くの人々は「共産党が私たちを豊かにしてくれる」と信じて疑わなかった。

 しかし、その信頼が大きく揺らいでいる。恒大の崩壊は単なる企業破綻ではなく、14億人の国民が「党」への信頼を失い、国そのものから距離を置き始めている現実を象徴している。中国経済の行方と共産党の未来を占ううえで、極めて重要な出来事といえるだろう。

(ジャーナリスト・団勇人)

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