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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈警察が総裁選に注目する理由。幹部が祈る都合のいい総理とは〉
今回は「警察と政治」をテーマに取り上げる。警察は政権与党と持ちつ持たれつの関係を築き、政治家が不祥事を起こせば、「政治の圧力」ではなく、「自主的」に行動する。命令や忖度には因果が内在するが、自主的な場合は問題が露呈することがないので調べようにも証拠がない。
こうして隠蔽組織は長らえてきたのだ。
俺も「木原事件」で煮え湯を飲まされた。06年に東京都文京区の住宅で安田種雄さんが不審死した事件だ。18年に再捜査になると、 安田さんの妻で重要参考人のX子は、自民党の木原誠二氏と再婚していた。元総理・岸田文雄氏の右腕であり、案の定、捜査は難航する。木原氏が妻の任意同行を拒否したり、X子の実家と別宅には行っても、自宅のガサ入れをしなかったのは、彼の存在が大きい。のちに「木原事件」報道で知ったが、当時、二階俊博幹事長は木原氏に「X子と別れろ」「取り調べにはちゃんと素直に応じろ」と進言していたとか。もちろん、それも永田町流の演技だ。二階氏は事実上、打ち切りになるのはわかっていたのだから。
下っ端刑事は一生懸命捜査をするのみ。しかし、政権与党の用心棒である警察幹部の考え方は違う。「政警」の距離感は近く、一緒に銀座で飲んでいた話は俺の耳にも届いているし、裏取りもしている。それは「木原事件」に限らない。19年に表面化した「桜を見る会」前夜祭の不透明な金の流れでも、告発された安倍晋三元総理は不起訴処分となっている。
自民党総裁選は終わったが、「顔」が変われば構築した関係が揺らぐ恐れがあり、警察幹部はヤキモキしたはずだ。
警察組織にとって都合のいい総理は、人事権などに介入せず、官僚機構に任せて体制維持をしてくれる人物である。09年に政権交代した民主党時代はまさに悪夢。検察審査会制度の活用や取り調べの全面可視化の議論を進めるなど改革に積極的で、警察や検察にとって都合の悪い局面が多く、捜査がやりにくくなった。
立候補者を振り返ると警察の立場で一番いいのは、高市早苗氏だ。治安強化を重視し、相次ぐ闇バイト強盗事件の時にも警察権の強化に言及。外国人政策にも規制強化を検討し、警察には追い風になる。
茂木敏充氏は経済外交重視で司法分野には無関心なので、警察には空気のような存在。厄介なのは、小泉進次郎氏だ。人気取り重視型で「令和の米騒動」の時もパフォーマンスを先行させ、全国農業協同組合連合会(JA全農)に対し、流通構造の見直しを求めた。警察の不祥事や冤罪で世論の反発が大きくなれば、警察批判に回ることが危惧されるから、博打のようなものだ。
はたして新総裁で警察との関係に変化が生じるのか―俺もしっかりと目を光らせていきたい。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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