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Posted on 2026年02月08日 08:00

急激に店舗拡大「鰻の成瀬」になぜか「閉店ラッシュ」がきた「9つの組み合わせメニューに改定」と「スクラップ&ビルド戦略」

2026年02月08日 08:00

 老舗鰻店の半額で1.5倍の量という破格のコストパフォーマンス。2022年9月、横浜に1号店をオープンすると、瞬く間に全国展開を果たし、2025年10月時点で国内380店舗超という驚異的な成長を遂げたのが「鰻の成瀬」だ。ところがこの急成長の陰で「閉店」が増え始めている。
 2025年に入り、府中店、下赤塚駅前店、新潟駅前東大通店、小牧店など複数の閉店が相次ぎ、浦和店は1年8カ月、高幡不動店はわずか10カ月での撤退と、極めて短命な店舗が続出している。

 成瀬の武器は、徹底したオペレーション効率化だった。海外の提携工場で一次加工した蒲焼を、専用機器で最終調理するだけ。職人技を不要にし、うな重の梅1600円、竹2200円、松2600円を実現した。
 しかし最近では「並ばずに入店できるようになった」「客がまばら」という報告が。声が見られる。かつての勢いは一服したように見える。

 転機は2024年8月のメニュー改定だった。シラスウナギ不足による原材料費高騰を受け、それまで量の違いだけで構成されていた「松・竹・梅」は見直され、価格と原料のグレードを示す「並・上・特上」と、量を示す「松・竹・梅」を組み合わせた計9種類の構成へと再編された。

「並」はアメリカ種の養殖ウナギで、従来の価格を維持。海外養殖ニホンウナギは「上」として300円値上げ、国産「特上」(梅3400円)も登場した。一見、選択肢が増えてよさそうだが、多くの客が「1600円」に引かれて来店し、「並・梅」を注文するとアメリカウナギになってしまう。「昔より味が落ちた」という声が広がったのは、この認識のズレが一因となっている。
「特上・松」4400円は「それなら老舗で食べたい」層を生み、中途半端なポジショニングとなった。シンプルさという最大の武器を失い、顧客体験に混乱が生じたのだ。
 
 フランチャイズ急拡大には、構造的リスクが潜む。本部の品質管理能力を超えるスピードで店舗が増えると、現場統制が効かなくなる。さらに最低賃金上昇が追い打ちをかける。低価格維持のために人件費を抑えすぎればサービスと品質は低下し、悪循環に陥る。原材料面でもウナギの養殖は稚魚の漁獲量に左右され、価格変動リスクが極めて高い。

 興味深いのは、閉店が続く一方で、新規出店が止まっていない点だ。これは不採算店舗を切り捨てながら好立地への出店を続ける「スクラップ&ビルド戦略」とみることができる。ただし、1年半での撤退が常態化すれば、フランチャイズ加盟希望者は減るだろう。

 成瀬が再び成長軌道に乗るヒントは、創業時の強みにある。誰が焼いても同じ仕上がりになる調理システムは、職人不足の外食業界にとって画期的なイノベーションだった。そしてなにより、老舗店の半額で鰻が食べられるという価格のインパクトも、色褪せてはいない。
 迷った時には店員に声をかければ、鰻の種類や量の違いを丁寧に説明してくれる。そうしたひと手間が「それでもこの値段」という納得感につながる。分かりやすさと安心感を取り戻せば、成瀬の魅力はもう一度、まっすぐに伝わるはずだ。
 
 外食産業の歴史は、急成長チェーンの栄枯盛衰で彩られている。この閉店ラッシュを一時的な調整で乗り越えられるのか、それとも拡大の歪みが本格的な退潮を招くのか。その答えは今後、数カ月で明らかになるのではないか。

(ケン高田)

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