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Posted on 2026年04月05日 18:00

「プロレスVS格闘技」大戦争〈藤田&中邑が総合格闘技の呪縛を解いた!〉

2026年04月05日 18:00

 アントニオ猪木の異種格闘技路線によって根づいたプロレスVS格闘技は、1993年11月にバーリ・トゥード(何でもあり)形式の格闘技大会UFCが誕生したのを機に変わった。

「どの格闘技が強いのか?」ではなく「誰が強いのか?」というMMA(総合格闘技)の時代に突入したのだ。

 こうした時代の流れの中で、新日本プロレスのオーナーだった猪木は、97年4月にプロ格闘家に転向した柔道世界選手権4度優勝&92年バルセロナ五輪銀メダリストの小川直也を投入して、新日本マットを純プロレスから総合格闘技路線にシフト。同年10月11日の東京ドームで、ヒクソン・グレイシーが髙田延彦に圧勝した一戦から、総合格闘技大会「PRIDE」が生まれた。

 99年1.4東京ドームで、小川が橋本真也を事実上のKOに追い込んだことで、新日本最強神話が崩壊。2000年代になるとプロレスはPRIDE、立ち技格闘技最強を決めるK-1の台頭によって、格闘技ブームに吞み込まれた。

 常に時代を先取りする猪木はPRIDE、K-1と交流を深め、00年8.27西武ドームにおける「PRIDE10」から、PRIDEのエグゼクティブプロデューサーに就任。同大会にケンドー・カシンを素顔の石澤常光として参戦させ、ハイアン・グレイシー戦を実現させた。石澤はブラジルの柔術道場で練習していた時期もあるが、急な要請で満足な準備ができず、顔面パンチ13連発にTKO負け。その後、石澤はボクシングジムやパンクラスの道場に通い、翌01年7.29さいたまスーパーアリーナの「PRIDE15」で雪辱している。

 同年8.19さいたまスーパーアリーナの「K-1アンディ・メモリアル2001」では、K-1VS猪木軍として藤田和之VSミルコ・クロコップが実現。両足タックルを仕掛けた藤田の左前額部にミルコの左膝がカウンターで当たり、大流血の藤田がわずか38秒でTKO負けに。この試合を機にミルコはキックから総合格闘技にフィールドを広げ、同年大晦日のさいたまスーパーアリーナにおける「猪木ボンバイエ2001」では、左ハイキックで永田裕志に21秒で勝利してプロレス界に衝撃を与えた。

 同大会での救いは、メインイベントに起用された安田忠夫が大番狂わせでジェロム・レ・バンナにギロチン・チョークで勝利したこと。借金、離婚の転落人生から大金星を挙げ、愛娘を肩車する姿が感動を呼んだ。

 PRIDE、K-1も協力する「猪木ボンバイエ」は大晦日の定番イベントとなり、翌02年の第2回大会では藤田とミルコが再戦。総合格闘家として進化を続けるミルコは、鉄壁の守りで判定勝ちに持ち込んで藤田の雪辱はならず。前年のヒーロー、安田もヤン“ザ・ジャイアント”ノルキヤにTKO負けを決した。

 プロレス界にとって一筋の光明になったのは、前年8月にデビューした直後にロサンゼルス道場に送られ、プロレスと総合格闘技の二刀流として育成された中邑真輔だ。ダニエル・グレイシーに腕ひしぎ十字固めで敗れたが、潜在能力の高さを見せつけたのである。

 翌03年の大晦日は異常事態になった。PRIDE、K-1、猪木の三者は協力体制にあったが、ミルコの契約問題でK-1とPRIDEが敵対関係となり、猪木もK-1との関係を重視してPRIDEから撤退。テレビ局も絡んで「猪木ボンバイエ2003」(神戸ウィングスタジアム=日本テレビ)、「K-1Dynamⅰte!!」(ナゴヤドーム=TBS)、「PRIDE男祭り2003」(さいたまスーパーアリーナ=フジテレビ)と、3つのイベントが競合したのだ。

 当初「猪木ボンバイエ2003」は高山善廣VSミルコをメインにしていたが、PRIDEと専属契約を結ぶミルコがキャンセル。次に永田VSアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが発表されたが、ノゲイラもPRIDEとの契約によりキャンセルに。大会2日前に永田VSエメリヤーエンコ・ヒョードルに決定するドタバタぶりで、62秒でTKO負けを喫した永田は格闘技戦争の犠牲者とも言える。

 なお猪木と友好関係にあるK-1のナゴヤドームには、IWGPヘビー級王者の中邑が出陣して、アレクセイ・イグナショフと不本意な没収試合に終わっている。

 かつて猪木は異種格闘技戦で名声を築いたが、いつしかプロレスが他の格闘技に食い物にされる時代になってしまったのだ。

 これに終止符を打ったのは04年5.22さいたまスーパーアリーナで、K-1が初めて開催したMMA大会「K-1ロマネックス」だ。

 中邑がギロチン・チョークでアレクセイ・イグナショフに勝利し、K-1、PRIDE、新日本で猛威を振るっていたボブ・サップを藤田が蹂躙。タックルで倒し、頭部にキックを連発して子供扱い。最後は戦意喪失のサップを顔面パンチでタップアウトさせたのだ。

 K-1は立ち技部門とは別にプロレスラーを巻き込んだMMAに本格進出を考えていたが、この1回で終わった。怯えが見えたことでサップの商品価値は落ち、プロレスは総合格闘技の呪縛から解かれたのである。

文・小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング」編集長として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)などがある。

写真・山内猛

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