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記事全文を読む→「猪木VSアリ戦」50年の真実〈第3回〉(3)日本メディアがアリに接触
ここで、猪木VSアリ戦の前史として、見落とされがちな事実を確認しておきたい。
モハメド・アリと日本のテレビ局は、76年になって突然接触を持ったわけではない。すでに長年にわたる中継放送を通じて、ビジネスの関係を築いていたのである。
71年のアリVSジョー・フレージャー戦、72年の康芳夫が手掛けたアリVSマック・フォスター戦を東京12チャンネル(現テレビ東京)が独占中継。74年にはNETがフォアマン戦(キンシャサの奇跡)を独占衛星中継して、高視聴率を叩きだしている。日本のテレビ局にとって、ヘビー級ボクサーの試合は最優良コンテンツで、アリはその中でも最強・最高のスターだった。
「世間では、アリが急に(日本アマレス協会会長の)八田一朗先生に日本での試合や興行を打診したかのように語られがちですが、まったく違います。アリと日本のテレビ局は、すでに何年にもわたって、世界戦の中継ビジネスを重ねていました。十分な実績と信頼関係がすでにあったんです。猪木戦は、その積み重ねの上に成立したものです。唐突にアリ側が提案したり、挑発したことによって始まった話ではありません」
ここで特筆すべきは、こうした中継を担った日本側の責任者たちの経歴である。
東京12チャンネルでアリの世界戦中継を手掛けたのは、初代運動部長の白石剛達、NET運動部長の永里高平、そしてアメリカでレストランを起業していたロッキー青木─この三者は、奇しくも八田の薫陶を受けたレスリングの猛者だったのだ。
「白石さんは、永里さんの1級下で早稲田大学レスリング部の監督でしたが、八田先生が東京12チャンネルに推挙したんです。永里さんも、ひと回り近く下のロッキー青木さんも同じ系譜に属する。八田先生から、アリと日本の格闘技界・テレビ界をつなぐ3本の太いパイプが伸びていった。これは偶然ではありません。突発的な思いつきではなく、何年もかけて積み上げられた人脈の集大成だったんです。アリと日本のテレビ局の関係は、八田先生という存在を中心にして、何重にも結ばれていたということです」
八田には、
「プロが栄えればアマも栄える」
という持論があった。既存の枠を超えるスケールの大きな発想だ。八田門下の3人がそれぞれの立場でアリとの縁を築き、やがて猪木VSアリ戦に結実したのである。
舟橋慶一(ふなばし・けいいち)1938年生まれ。62年にNET(日本教育テレビ/現テレビ朝日)入社。アナウンサーとして「ワールドプロレスリング」実況など多数の番組を担当。
福田竜一(東京新聞)
写真提供/山内猛
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