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Posted on 2026年09月06日 18:00

気になる著者に直撃!〈名越健郎〉ジョークで政治の憂さ晴らし。ロシア人の生き方を学ぼう!

2026年09月06日 18:00

ジョークで読み解く「ロシア近現代史」
PHP新書/1320円

 ロシアと聞けばボルシチやウォッカを思い出す人が多いだろう。だが「アネクドート(小話)」もロシアには欠かせない文化の1つである。民衆はもちろん、プーチンをはじめとする歴代大統領も好んで披露するという。時事通信社・元モスクワ支局長でジャーナリストの名越健郎氏が、アネクドートの重要性を説く。

「アネクドート」とは、社会や政治を揶揄する風刺的なジョーク。起源は17世紀にさかのぼるが、時代や政権によって大きな変化を遂げてきた。

「旧ソ連時代、急速に発展しました。民衆は秘密警察の監視や密告を恐れ、表面では従順に振る舞いながら、本音では政府を小話で痛烈に批判して憂さ晴らしをしていた。日本にも社会を風刺して笑いを取る川柳が江戸時代から親しまれていますが『五・七・五』という形式があります。しかしアネクドートには、そうした定式はありません。そのぶん、自由な発想でオチを作ることができるんです」

 背景となる歴史や政治をある程度知っていないと、アネクドートを理解するのは少し難しい。

「今の日本ではウクライナ侵攻の影響もあって、ロシアの印象は非常に悪くなっていますが、ロシア人は今の厳しい現実を客観視し、ジョークで受け流す文化があります。ロシアの歴史を学術書で読むのは大変ですけど、ジョークを通して読むと、生き生きと理解できるのではないかと思い、歴史書としてもわかりやすく読める本を目指しました」

 名越氏自身、時事通信社の記者として、91年のソ連邦崩壊前後とプーチン時代(初期)の2度、モスクワに駐在した。現地生活の楽しみの1つが「新作のアネクドートを仕入れることだった」と当時を振り返る。

「ロシア人は親しい友人を自宅に招き、応接間ではなく、台所でお互いにアネクドートを披露します。庶民の集合住宅はとても狭く、台所が交流のスペースだったのです。ロシア語の韻を踏んだ難解なものが多くて、1度目の駐在では、私だけが笑えず、何度も説明を頼んで場をシラけさせました。なので、2度目の駐在の時は、ジョークをいくつか用意して、スマートな表現で臨むようにしました。彼らはアネクドートを披露することで絆を深めています。ロシア人は、ジョークを作るセンスや現実をパロディー化する能力が非常に優れていると感じました」

 本書は1917年のロシア革命からウクライナ戦争までを、名越氏が集めた傑作のアネクドートとともに読み解いていく。プーチン大統領を皮肉るジョークも多い。例えば、こうだ。

(問)プーチン大統領の後継者は誰か?

(答)まだ生まれていないだろう。

 このような政治風刺はもちろん、セックスや酒にまつわるジョークを紹介しているのも興味深い。

「ウクライナ侵攻以降も、新しいジョークが生まれていることを知ってほしい。『ウクライナは笑いによってロシアと戦っている』という指摘もあります。日本は今、格差が広がり、共同体意識が薄れている。これから厳しい時代になる可能性が高いと思っています。そんな時こそ、不満を抱え込むだけではなく、発想を少し変えて笑いに変える。本書を通じて『逆境でも笑いを失わない』というロシア人の生き方を学び取ってほしいですね」

〈原悟平〉

名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学客員教授。53年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授、国際教養大学特任教授を経て現職。論文博士(安全保障)。著書に「独裁者プーチン」「ゾルゲ事件80年目の真実」など多数。

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