芸能
Posted on 2015年08月16日 17:57

加藤武 生前明かしていた「犬神家の一族・等々力警部」の役作り

2015年08月16日 17:57

201500820o

「よしっ、わかった!」と威勢のいい声を上げるが、まるで見当違いな推理に観客は大笑い。金田一耕助シリーズにおける等々力警部は、突然世を去った名優・加藤武(享年86)のハマリ役だった。

 黒澤明、市川崑、今村昌平、深作欣二‥‥日本映画界の巨匠たちに愛された個性派の脇役が加藤武である。悪役から人情派まで幅広くこなし、文学座代表たる演技力に定評があった。

 加藤は7月31日、スポーツジムのサウナで倒れ、そのまま帰らぬ人となる。役者仲間や後輩たちが急逝を惜しむ声を寄せていたが、週刊アサヒ芸能には近年、何度か登場して「役作り」を明かしている。

 例えば「仁義なき戦い」(73~74年、東映)では、腰抜けの打本昇組長に扮したが、「これほど痛快な役はなかった」と加藤は言う。

 金子信雄扮する山守義雄組長にイビられ、満座の前で悔し涙を流す。

「金子さんの憎たらしい演技がうまいんだ。で、俺がヒイヒイ泣くんだが、言ってみれば金子さんの山守が大悪党、俺のが小悪党だよ。卑怯未練なだらしない様が、どこかコミカルで妙な現実感がある。今まで演じた中で最も気に入っているよ」

 加藤が「仁義なき戦い」で取材を受けるのは週刊アサヒ芸能が初めて。実に楽しげに語るのが印象的だった。

 やがて打本は、抗争相手の武田明(小林旭)に、密告を条件に借金を申し込む。武田に「このボケ!」と一喝される姿は、打本らしかったと加藤は言う。

「ヤクザを辞めてでも生き延びたい。かっこいいのはどんどん消されて、山守とか打本とか悪党は生き延びる。現実を見ると、あの原発事故にも当てはまるんじゃない? 現場の作業員は放射能と戦い、上の者はおびえて視察にも行かないような状況がね」

 そんな加藤の最もポピュラーな当たり役は、「犬神家の一族」(76年、角川春樹事務所)に始まる金田一耕助シリーズの等々力警部だろう。いつも早合点して「よしっ、わかった!」と犯人を特定するが、当たったためしはない。これぞ加藤の緻密な演技プランだった。

「金田一シリーズは凄惨な場面が多いから、コメディリリーフとして等々力が出るとホッとする効果がある。それに観客も犯人は誰かと推理して観ている。そこに警部が『よしっ、わかった!』と見当違いなことを言う。客に『バカだなあ』と優越感を持たせるのが役目なんだよ」

 粉薬を吹きこぼすシーンもおなじみだが、これも加藤の案で「龍角散3にクリープ7」で調合。画面に最も映える比率を考えてのことだ。

 さらりとしながら、されど凄味ある役者がまた1人いなくなった。合掌──。

カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    エンタメ
    2026年03月09日 06:30

    日本にも「バベルの塔」が実在していたことを知っているだろうか。バベルの塔は「旧約聖書」の「創世記」に登場する、人間が天に届く塔を築こうとして神の怒りに触れ、破壊されてしまった伝説の塔である。「馬鹿と煙は高いところに登る」という言葉があるが、...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    社会
    2026年03月11日 06:45

    スマホの通知に追われる日常から、少し距離を置く。そんな「デジタルデトックス」では、若者が編み物や日記、フィルムカメラといったアナログ趣味にハマるケースが報告されているが、この流れは中年層にもじわじわと波及している。その背景にあるのは、仕事で...

    記事全文を読む→
    芸能
    2026年03月13日 14:30

    音楽ライブチケットの高額転売をめぐり、旧ジャニーズ事務所の人気アイドルが所属するSTARTO ENTERTAINMENTのライブ主催会社が、転売サイト大手「チケット流通センター」の運営会社と、高額転売を繰り返したとされる東京都内の男性1人を...

    記事全文を読む→
    カテゴリー:
    タグ:
    注目キーワード

    人気記事

    1. 1
    2. 2
    3. 3
    4. 4
    5. 5
    6. 6
    7. 7
    8. 8
    9. 9
    10. 10
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2026/3/17発売
    ■650円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク