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記事全文を読む→「挫折」の受け止め方 ガッツ石松
おトボケな珍言を披露する一方で、ドラマや映画で見せるイブシ銀の演技。このギャップが、ガッツ石松の魅力である。我々を楽しませる“二面性”は、彼の生きざまの表れでもある。これまでの道程には「OK牧場」では片づけられない多くの試練が隠されていた!
覚悟の出馬で残ったものは…
彼の口から出た数々の珍言、「ガッツ伝説」のおかげで、ガッツ石松(62)は明るい男と思われがちだ。
しかし、かつて「みずから命を絶つ」という選択肢が頭に浮かんだことがあった。
今から16年前のことだ。96年の衆議院選挙に、ガッツは自民党公認候補として、東京9区から出馬した。結果、4万3766票を獲得したものの、トップとは2万4000票余りの差で3位。落選してしまう。
「選挙の2年ぐらい前から勉強して準備をしてね。選挙資金のために、自宅を抵当に入れるなどしてあちこちから借金したんだけれど、結果は落選。残ったのは3億円もの借金だった。正直、俺は自殺も考えたよ。1億円の生命保険に入っていたから、それで少しは返済できるだろうって。でも、よーく考えてみたら、すでに解約してしまっていたんだよ。解約したことで400万円か500万円は戻ってきたので、それを借金の返済に充てていたんだね」
今でこそ、淡々と話すガッツだが、当時は相当応えたようだ。回想しながら浮かべる笑みも腹の底からのものとは思えない。
「無私というのかな、辛抱強く自分なりに真面目に頑張っていたら、運が寄って来たんだね。パチンコ台やスロットのキャラクター使用の話が入って来たり、テレビCMの依頼が来たりしてね。それぞれ数千万円という契約料だったし、そうそう、テレビのクイズ番組では1000万円ゲットしたこともあったな」
こうして3億円の借金は10年かけて完済した。
しかし、ガッツにとっては重い精神的負担になっていたことは疑う余地もない。最後の借用書を処理する際には体調を崩し、救急車で病院に緊急搬送されるという騒ぎになったほどだった。
「診断は前庭神経炎、いわゆるメニエール症候群だね。クラクラと目が回って立っていられなくなったんだよ。結局、1週間入院して治療することになった。まあ、借金を返し終わるということで、す~っと気が抜けたんだろうね」
ボクシングはもちろんのこと、芸能界でも数々の修羅場をくぐり抜けてきたガッツは、しみじみと言う。
「挫折とどう向き合うかっていうことは、つまりその人の打たれ強さが試されているのと同じだよね。三つ子の魂百までって言うけど、俺はもの心ついた時から打たれ強いのかもしれないな」
戦争の爪痕がまだ残る1940年代。そんな時代背景もあり、ガッツは貧しい少年時代を過ごした。
「きゅうりやサツマイモ、いちご、メロン‥‥。近所の家のものを黙ってもらって食べたもんだよ。アメも近所のヤツが舐めているのを、無理やり口を開けさせて取り上げて、舐めたっけ。紙芝居も来たんだけど、水飴を買わないと見せてくれないんだよ。俺には買う金なんかないから空き地の木に登って見ようとしたりね。そうすると、紙芝居のオヤジも俺に見えないように違う方向に絵を向けたりするんだよ」
そして、当時の高級品であるバナナも知らずに育った。
「近所のヤツが竹の棒みたいなものを手で縦に割っているので、『それは何だ』と聞いたら背中のほうに隠してしまった。で、それを無理やり取ったら、グニャリと手についてね。それを食べたら口の中でとろんと溶けたんだよ。こんなうまいものが世の中にあるんだとビックリしたもんだよ。近所のおじちゃん、おばちゃん、駐在所のお巡りさん、警察署など、ずいぶんとお世話になったなぁ」
中学を卒業した2日後、単身上京した。15歳の少年はボクシングの練習をしながらネジ工場、弁当店、熱帯魚の餌となるイトミミズ採り、ラーメン店、アイスクリームの配達、印刷業、牛乳配達、風呂屋の番台など10種を超す職を転々とした。17歳でボクサーとしてプロデビューを果たしたが、順風満帆とはいかなかった。むしろ、挫折の繰り返しだった。
「血圧が高く、よく寝汗もかいたから、体はそれほど丈夫ではなかったんだろうね。だから、スタミナはないし、あと一歩のところでガス欠になってしまうことが多かった」
全日本新人王になるなど素質の片鱗は見られたが、勝負に対する淡泊さが災いして多くの敗北を味わわされた。
66年のデビュー戦からWBC世界ライト級王者になる74年までの8年間の戦績は、42戦26勝(14KO)11敗5分という平凡なものだった。
東洋王者にはなっていたが、勝率は約6割。すでにパナマで2度の世界挑戦を経験済みだったこともあり、多くを望むのは酷という声が多かったのは事実だ。
その当時、ガッツはリングの外で新聞の社会面をにぎわしたことがある。
弟と友人を襲ったケンカ相手8人を路上であっという間に“KO”してしまったのだ。事情聴取を受けた際、「認定書に『チャンピオンたる者はいつ、どこで戦っても負けてはならない』と書いてあるからぶっ倒したんです」と答えて警察官をアキレさせたという逸話も残っている。
結局、この時は2日間身柄を拘束されたが、事情が最大限に考慮されてプロボクサーのライセンスは剥奪されずに済んだ。
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