社会

オウム残党「首都圏にサティアン建設」戦慄実態(5)

有田芳生が緊急警告!オウムはこうして生き延びた
「信者の洗脳を放置した国の責任だ!

 凶悪事件を起こし、死刑判決を受ける元幹部が続出しながら、なぜ信者はオウムを離れようとしないのか。長年にわたってオウムとその残党に接触し、取材を続けてきた有田芳生氏が、信仰の闇を語った。

麻原逮捕の翌年、破防法に対する麻原の弁明がありました。そこで麻原は、信者数は1万2000人、うち出家信者が1400人だと語っています。これだけの勢力がオウム解体後に分派して、あるいは「1人オウム」的に社会に戻っていかざるをえなかった。教団内で親しかった人同士が慰め合ったり相談し合ったりして、個々にくっついていった。

 今回の菊地直子、高橋克也両容疑者の逮捕で、両者のマインドコントロールが解けているか、というのが話題になりましたが、何をもってマインドコントロールを評価するかなんです。

 あれだけ強烈な麻原の教えを信じた人は、基本的には、専門的なカウンセリングを受けなければマインドコントロールは解けないんですよ。1万2000人の心の整理はできていないと見たほうがいい。理論上は1万2000人のほとんどが、まだ信者の状態でいることになります。つまりこの17 年間、手配犯が逃走し、捕まっていますが、彼らも含め、カウンセリングをまったく行うことができなかったことが大問題なんです。

 確かにカウンセリングを受けた人を私は知っていますよ。でもごく少数です。当時、カウンセリングは関係省庁の連絡会議で議論したけれど、研究会を開くばかりで、実際は動かなかった。そもそも、カウンセラーもいない。私もカルト問題の学者たちと相談して、保健所が窓口になって心の問題を抱えている人が来てくれれば・・・・という準備はしていたんですよ。でも政府は動かなかった。放置した国の責任はありますね。結局のところ、洗脳が残った彼らを団体規制法で監視していくんでしょう。

 ただ、もともと大多数の人はヨガ体験をしたり、世の中をよくしたい、悟りを開きたいと思ってオウムに入ったわけです。ヨガ修行を通じて体調がよくなったという人は、麻原とは関係なく蓮華座を組んだり、仏教修行を続けたりする。彼らにとっては、なぜオウムがサリン事件を起こしたのか、不思議でしょうね。

 実はね、アレフにしても行き場のない人々が残っているんですよ。年取った人、社会生活がうまくいかなかった人。オウムの教義がいいのではなく、そこしか居場所がない。社会に出たとしても元オウム信者とわかれば差別を受けるだろうし。私が数年前に(アレフの施設を)見に行った時もおじいちゃん、おばあちゃんがいて、「いつまでいるの?」と聞くと「いやぁ、いつか出ようと思ってたんですけどねぇ」と言う。

 では、どうするのか。宗教法人法改正の時も既成団体から反対が出たように、国会レベルでやると反論が出ます。01年にフランスで反カルト法ができているし、そういうのを作っていくのが私の役割だと思いますが、法律は議員1人では何もできない現状がある。根回ししたり、どこかのグループに入ったり、いろいろ必要になるんですが、閣法(政府が提出する法案)があまり国会を通っていない状況下、民主党執行部が議員立法を嫌がるんですよ。

 結局、また何か事件が起きないと、何も動かないんです。オウムの一連の事件の時ですら、簡単に動かなかったわけですから。

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