エンタメ

世界のベストセラーを作った「日本マンガ史」解体“深”書!(1)世界売り上げ占有率は92%

20160901e1st

 売り上げ、内容ともに世界一──。「マンガ」は今や、日本の代表的文化として世界に広く認知されている。日本の漫画はなぜこんなにも面白いのか。なぜ続々と突出した漫画家が生まれ続けるのか。世界のベストセラーを作った源流に迫る!

 日本の漫画が世界市場を席巻している。アニメやゲームなどとの線引きが難しいが、漫画単行本中心の市場を考えると、全世界で数兆円規模、日本だけで4000億~5000億円ほどに上る。

 世界で最も売れた漫画は何か。1941年刊行開始のシリーズ「クラシックス・イラストレイテッド」(A・L・カンター編)の全169巻で、累計なんと10億冊。二番手がマーベル社の「Xメン」で5億冊、3番目にはスヌーピーでおなじみ「ピーナッツ」の4億冊で、ベスト3はアメリカの漫画が独占する。

 日本では「ONE PIECE」の3億8000万冊が最高で、世界第6位。7位にフランスの「ルキ・ルク」が入り、8位に2億8000万冊の「ゴルゴ13」がランクインする。その先は日本の漫画が目白押しで、「ドラゴンボール」「NARUTO」「ブラック・ジャック」「ドラえもん」と続く。日本漫画は世界ベスト50のうちの30冊を占めているのだ。

 日本の漫画が本格的に海外進出を始めたのは72~73年のこと。そこで74年以降に登場した作品に絞って、世界の漫画市場を眺めてみよう。「ゴルゴ13」や「ドラえもん」が省かれ、ベスト50に入っている「サザエさん」「鉄腕アトム」も除外される。アメリカの「Xメン」「ピーナッツ」も外れるが、その結果は‥‥。

 1位が「ONE PIECE」、2位「ドラゴンボール」、3位「NARUTO」と、ベスト3を日本漫画が独占している。同率3位にアメリカの「ウォッチメン」が入るが、5位は「こちら葛飾区亀有公園前派出所」、6位「名探偵コナン」と、再び日本漫画が登場する。ベスト50に日本漫画がなんと46タイトルも入り、日本漫画占有率は92%。圧倒的な強さである。

 これをさらに20年繰り上げ、94年以降に世に出た作品に限定すると、「ドラゴンボール」「こち亀」が外れるが、それでもベスト20を日本作品が席巻してしまう(ベスト50まで独占すると思われるが、外国作品の部数が確定できない)。

 この20~30年、世界の漫画市場は日本勢に押され、どこの国でも日本漫画が市場を圧倒してきた。どうしてだろうか。早い話、それは日本の漫画が面白いからだ。

 漫画は「絵」「ストーリー」「キャラクター」「構成力」の4つの要素で決まるとされる。キャラクターが確立し、物語が魅力的で、絵が巧ければヒット作が生まれると考えがちだが、実は構成力がより重要なのだ。

 日本の漫画が世界の漫画と異なっている点があるとすれば、その「構成力」と「擬声語の多さ」が挙げられる。私が大学の授業でこう解説すると、「構成力って何ですか」「擬声語の数なんて世界中同じでしょう」と、生徒からの質問やら反論でにぎやかになる。

 構成力とは「間(ま)」や「引き」という言葉で表される技法で、これは古典絵本や紙芝居にも見られる日本的な見せ方。落語にも通じるところがある。

志波秀宇(しば・ひでたか)<漫画 研究家>:昭和20年東京生まれ。早大政経学部卒。元小学館コミックス編集室室長。元名古屋造形大学客員教授。小学館入社後、コミック誌、学年誌などで水木しげる、手塚治虫、横山光輝、川崎のぼるなどを担当。先頃、日本漫画解説の著書「まんが★漫画★MANGA」(三一書房)を出版した。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
2
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
3
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
4
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか
5
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」