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記事全文を読む→吉永小百合と同じコタツに入れなかった「きみまろ」
「まんまと先生には‥‥」
物語のクライマックスで、定年間近な刑事に扮した石橋蓮司が苦笑する。出番はわずかながら、圧倒的な存在感を発揮する石橋が口にすると、それはシナリオだけとは思えない。初老の川島はる先生を演じた吉永小百合(67)の演技に対し、心地よく裏切られた驚嘆にも思えた。
この物語の始まりは、石橋ら刑事たちがはるを訪ねるシーンから。はるは北海道で離島の分校教師だった時代があるが、刑事たちは教え子の1人・信人(森山未來)の行方を追っている。はるが子供たちと離れて20年の歳月が経ち、それからは一度も接触していないと言うのだが‥‥。
最新作「北のカナリアたち」(11月3日公開/ 東映)は、デビューから55年を数える吉永にとって、116本目の出演映画となる。初主演の「ガラスの中の少女」(60年/日活)では可憐な女子高生を演じ、以来、年齢とともに役柄を成長させてきた。
今年は8月に高倉健(81)の7年ぶりの主演作「あなたへ」(東宝)が公開された。まっすぐ映画だけに向き合ってきた年輪が深い味わいとなり、予想以上の大ヒットを記録している。
これに続く形で、最後のスター女優たる吉永の最新作へとつながってゆく。高倉もそうだが、半世紀を超えて「主演」でいられるのは、熱烈なファンの存在があればこそ。吉永の場合は「サユリスト」という絶対的な冠詞があり、タモリや野坂昭如が有名である。
個性的な漫談で知られる綾小路きみまろもその1人で、青春時代は5歳年上の吉永への憧れとともにあったと言う。
「ファンになったのは『いつでも夢を』(62年)を橋幸夫さんとデュエットされている頃からです。中学生だった私は、ただ憧れていたものです。こんなきれいな女性が世の中にはいるんだ、と子供心にそう思ったものです」
そんなきみまろに吉永からオファーが届く。それは主演作の「まぼろしの邪馬台国」(08年/東映)に出てほしいというものだった。九州・長崎で邪馬台国の研究に明け暮れた盲目の夫を支える妻─それが吉永の役どころだった。
実は吉永もきみまろのファンということで、共演を願い出た。「出演オファーをいただいた時は『ほんと? ほんと? ほんと???』と3回も確かめました。そして初めてお会いしたのが長崎のロケ地でした。岩陰に咲いた一輪の花、白百合のようでした。私のような役者経験のない者に『よろしくお願いします』と頭を下げてくださいました」
きみまろはコメディリリーフの役割であり、女装したまま吉永の前に現れる。その撮影の舞台裏ではこんな1コマがあった。
「寒い時期のロケで、小百合さんの楽屋にコタツがあり『こちらで暖まって』と言われ、直立不動でしばらく立ちすくんだことを憶えています」
もちろん、偶像たる吉永と同じコタツに入ることなどなかったと言う。
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