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記事全文を読む→天才テリー伊藤対談「立川志らく」(3)談志のマネでなくセンスを盗もうと
テリー 実際に弟子入りしてみて、談志師匠はどんな方でしたか?
志らく 当時、他の兄弟子たちは「人間修行をしてこい」と言われて築地に移っていたものですから、私が師匠の周りのことを全部やることになりました。毎日怒りながら、いろいろ教えてくれましたよ。掃除機や洗濯機のかけ方から着物や下着、ワイシャツの畳み方から、「ドタドタ歩くな、この野郎。そっと歩け」みたいな歩き方までね。
テリー 師匠とずっとマンツーマンなんて、すごく贅沢じゃないですか。
志らく そうですね、ラッキーといえばラッキーでした。
テリー 落語はどんなふうに教えてくれるんですか?
志らく まず最初に「高田がおもしろいと言った落語を、ちょっと聞かせろ」と言われたのでやってみたら、始めて30秒ぐらいで「それじゃプロとして通用しないから、俺のやるとおりにやれ」と。「道灌」という前座の噺をボソボソと30分ぐらいしゃべってくれて、「じゃあ、明日は初高座だ」と。
テリー ええっ!?
志らく 「今日覚えて、明日、俺と同じようにやれ。ただし時間は10分だ」と。もう、わけがわからなくて。入ってまだ1カ月で、名前もついていないのに。
テリー それで、初高座はどうなったんですか?
志らく 一つもウケないですよ。客席がお通夜のようにシーンとなって。でも高座を降りると、談志は「それでいいんだ。お前はうまい。そのままやれ」と言うわけですよ。
テリー お客が沸かなくても「それでいい」って、どういうことなんだろう?
志らく 目の前で談志を聞いた時に、自分が落研でやってきたものとはまったく違って、音楽のようにちゃんとリズムに乗っけてしゃべっているんだ、ということに気づいたんですよ。私は父親も母親も音楽家で、ずっと音楽が流れている環境で育ちましたから、そういう勘どころはあったと思うんですけど。
テリー なるほど、演技じゃなくて、リズムが大事なんだ。
志らく はい。だから、10分ぐらいにまとめた噺を歌みたいに覚えたんですが、談志はそれを認めてくれたんだと思います。
テリー でもさ、いきなり1カ月の弟子が高座デビューしたら、他の兄弟子はさぞかし慌てたでしょう。
志らく 嫌われましたねェ。そんな中で、先輩の(立川)談春兄さんが、唯一私と仲よくしてくれたんですよ。談春兄さんは私より年下ですけれど、前座の頃から天才的にうまかった。いわゆる神童ですよね。で、向こうは向こうで「こんなにおもしろいことを考えるヤツがいるんだ」と私に近づいてきてくれて。すっかり意気投合して、2人でいろいろやりました。
テリー ああ、「立川ボーイズ」は、当時注目されましたものね。ところで、談志さんの芸って、すごくクセがあるじゃないですか。弟子の立場だと、やりにくいんじゃないですか?
志らく おっしゃるとおりで、周りにいる兄弟子たちは、談志のコピーみたいになってた人が多かった。だけど私は、ただマネるだけではしかたないなと思って、談志のセンスを盗もうと思いました。
テリー 例えば、どういうことですか。
志らく 談志が好きな映画や懐メロを吸収しました。実は、ミュージカル映画が苦手だったんですが、談志は大好きなので、片っ端から見ていったんですよ。そしたら徐々にそのおもしろさがわかってきた。そうやっていろんな世界が広がっていったのは、談志のおかげですね。
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