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映画「空海」公開記念対談!「平安の超天才」は3カ月で密教の祖師になった(2)通訳なしで中国語を話した

河合 20代の空海は、山の中での修行をしていたのですが、31歳になって突然、遣唐使のメンバーに入り、中国・唐に渡ることになります。空海は一介の私度僧だったのですが、東大寺で得度(とくど)を受けて留学僧の資格を得たのです。ところで、遣唐使の船は何隻あったか知ってますか?

美甘子 えー、知りません。

河合 4隻です。つまり、どれかが沈んでもいいようにと。

美甘子 ちゃんと着けるかどうか、危険な航海だったんですね。

河合 空海が乗ったのは第1船でしたが、嵐にあって福州というところに漂着します。ちなみに、同じ船には、のちに空海、嵯峨天皇(さがてんのう)とともに三筆(さんぴつ)の一人となる橘逸勢(たちばなのはやなり)が、第2船には、空海のライバルが乗っていました。

美甘子 天台宗の最澄(さいちょう)ですね。

河合 空海の乗った第1船と最澄が乗った第2船はなんとか唐に到着するんですが、他の1船は途中で引き返し、もう1船は行方不明になるんです。福州に着いた時、現地の人に海賊かと疑われて船を下ろされ、砂の上で待機させられます。リーダーの藤原葛野麻呂(ふじわらのかどのまろ)が、遣唐使だという手紙を漢文で書くのですが、子供のような文章しか書けずに信用されなくて。そこで空海に手紙を書かせたら、これがすばらしい名文で、観察使が感銘を受けてすぐに長安への旅を認めてくれたという逸話があります。

美甘子 へぇー、中国語というか漢文ですね。

── 原作の小説にもその名文が引用されています。

河合 空海は遣唐使として出発する前、すでに中国語をマスターしていて、通訳なしで自由に会話し手紙が書けたということで、語学も天才的な才能があったようですね。唐の都・長安(ちょうあん/現在の西安(せいあん))に着いて、空海はまずは密教に必要なサンスクリット語を3カ月ほどでマスターしたといいます。そして、恵果(けいか)という偉い僧に密教を教わることになる。空海が訪ねていくと、「お前が来るということは知っていた」と語り、すでに高齢で寿命も長くないことから、すぐに「お前に全てを教える」と言ったそうです。

美甘子 恵果の弟子もびっくりしたでしょうね。外国から来た人に、師がいきなり全てを教えるなんて。

河合 密教の儀式で灌頂(かんじょう)というのがあります。目隠しをして胎蔵界(たいぞうかい)、金剛界(こんごうかい)という2つの曼荼羅(まんだら)の上に華を投げるのですが、どちらも密教の最高の仏である大日如来(だいにちにょらい)の上に落ち、恵果ら弟子たちも皆、驚いた。それからわずか数カ月で空海は恵果から密教の奥義(おうぎ)を全て学びます。恵果は空海を私の跡継ぎにすると言って、息を引き取った。恵果のお葬式の文章も空海が全部書きました。わずか3カ月ほどで、空海は大日如来から数えて第8代の密教の祖師(そし)になったんです。

<プロフィール>

河合敦(かわい・あつし)1965年、東京都出身。青山学院大学文学部史学科卒業、早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学(教育学研究科社会科教育専攻日本史)。高校教師27年の経験を生かし、歴史研究家、歴史作家として講演、執筆、テレビをはじめとするさまざまなメディアで日本史の解説を行っている。新書判「大久保利通 西郷どんを屠った男」(徳間書店・2月28日刊)など著書多数。昨年は自身初の歴史小説「窮鼠の一矢」(新泉社)を上梓。

美甘子(みかこ)1982年生まれ。愛媛県今治市、国宝とロマンの島・大三島出身。専修大学文学部日本語日本文学科卒業。坂本龍馬など歴史上の人物をこよなく愛する「歴ドル」として、テレビ、ラジオ、雑誌などで活躍中。高知県観光特使、神々の国 宮崎PR大使、いよココロザシ大学生徒会長なども務める。著書に「龍馬はなぜあんなにモテたのか」(KKベストブック)などがある。趣味は歴史上の人物のお墓参りと、昭和の香り漂う純喫茶巡り。特技は幕末の志士たちの変名や辞世の句が言えること。

「空海-KU-KAI-美しき王妃の謎」全国東宝系にてロードショー

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