スポーツ

玉木正之のスポーツ内憂内患「JOCの報道規制は平昌五輪で最悪の出来事だ」

 女子スピードスケート選手の大活躍、大人気の「そだねージャパン」カーリング女子は銅メダル、羽生結弦は見事な五輪2連覇、ノルディック・スキー複合にスノーボード・ハーフパイプは銀メダルで、モーグルは銅メダル‥‥と、メダルの個数(金4銀5銅4=11位)以上の喜びに沸いた平昌冬季五輪だった。が、そんななかで、最悪の出来事と言えたのが、JOC(日本オリンピック委員会)の「報道規制」である。

 JOCは、平昌に出場する選手の所属大学や企業に対して、開幕前の壮行会を非公開にするよう求めてきたのだ。それは、JOCやIOC(国際オリンピック委員会)のスポンサーである協賛企業の「利益」を守るのが目的らしい。

 つまりJOCやIOCに協賛金を出していない団体が選手の壮行会などを開き、それが報道されれば、企業や大学の団体名がオリンピックとともに報道(宣伝)されることになり、その結果、多額の協賛金を拠出した協賛企業の「不利益」になる、というのが「報道規制」の理由だった。

 壮行会だけではない。パブリック・ビューイング(PV)の場を設けて選手を応援することも、協賛企業以外の団体が行うと協賛企業の「不利益」になるとの判断で「報道」が禁じられた。

 報道されなければ、大勢で応援している声が広がらない。たとえば金メダルを獲得した小平選手を応援していた長野県松本市の相沢病院は、予定していたPVを中止。商業目的に当たらないとして許可された地方自治体(松本市)が、急遽相沢病院に代わってPVを行ったという。その結果、相沢病院では職員だけの観戦となったが、SNSへの掲載が商業(宣伝)目的ととられないよう注意して、職員には「撮影禁止」を徹底したという(毎日新聞2月27日付朝刊より)。

 このJOCの方針で、首を傾げたくなることがある。一つは、五輪協賛企業の出すカネは純然たるビジネスであり、決して選手やスポーツを応援する寄付ではない、ということだ。

 何とも世知辛い世の中になったものだが、協賛企業の出すカネが、すべてのスポーツやスポーツ選手の支援に回るわけでなく、こんな規制を続けていればマイナースポーツへの支援はなくなってしまうだろう。

 さらに、このJOCの指示は企業や大学だけでなく公立高校へも伝えられ、スピードスケート・ショートトラックで出場した菊池悠希選手などの出身校である長野県立小諸商業高校も、大会開幕前に予定していた壮行会を、急遽非公開にしたという(東京新聞1月18日付朝刊)。

 私立大学だけでなく、公立高校までも商業(宣伝)目的になるとは、もうめちゃくちゃな判断で、JOCは五輪への国民的応援に水を差したというほかない。

 自ら商業主義に走っているから、カネを出さない団体は全部締め出せというわけか。しかし前出の毎日新聞の記事によれば、壮行会など「非商業的、教育的な利用は問題ない」とIOCは返答し、日本私立大学協会もJOCに「改善」を申し入れるという。

 こんな「報道規制」が存在しては2年後の東京五輪はどうなる? と心配になるが、これはどうやら何も問題なさそうだ。なぜなら朝・毎・読・日経・産経の大手新聞やキイ局のテレビ各局はすべて(中日・東京新聞等を除いて)多額の協賛金を出してオフィシャル・パートナーとなっているのだ。

 カネを出して取材許可をもらうなど、報道機関がPR紙に堕す行為とも言え、情けない限りだが、今回ばかりは有利に働くはず。

 オフィシャル・パートナーのメディアは、東京五輪のどんな取材報道も、自由自在にできるはず‥‥ですよね、JOCさん!

玉木正之

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