芸能
Posted on 2014年06月12日 09:58

「トラック野郎」の奇才・鈴木則文監督が愛した女優たち(4)7時間も延々と「文太待ち」

2014年06月12日 09:58

20140612i

 監督の寛容で温厚な性格は、こんなエピソードも生んだという。

「忘れもしない、初日は朝9時からの撮影開始なのに、文太さんが夕方4時か5時に来た。それまで延々、『文太さん待ち』だったんです。で、『おはようございます』と私が挨拶したら、文太さんは『オッ』と言って終わり。監督もスタッフもみんな、のんびり待っていて、『いつものこと』という感じでした。これが東映なのか、と‥‥」

 さて、この作品には、シャワーを浴びる千葉に彼女が抱きつく激しいラブシーンも登場する。「トラック野郎」シリーズの中でも出色の色っぽさが際立つ。

「ファッションモデル時代は水着姿にもならなかったのに、その私がよくあの映画で‥‥と思いますね。まぁ、あえてモデルの道を捨てて、戻る道を断ち切ってきましたから、そのくらいの覚悟はできていました。でないと、できませんから」

 監督に言われるままに演じたという彼女だが、

「女優としての経験がありませんから、一回一回、一生懸命演技していましたけど、(ラブシーン撮影の様子は)ハッキリ覚えていないなぁ。千葉さんを介抱して傷の手当てをしてあげるシーンは鮮烈に覚えているんですけど。あれは実は、私の発想だったんです。千葉さんの傷口を舐めたんですよね。母親のような感情が湧き起こってきて、こういう介抱のしかたはどうだろう、と。千葉さんは男臭さが廃れるからと、『マヤに助けられるのは嫌だ』って反対したんですけど、監督が『それ、いいね。男がほだされるのはすごくいい』と言って論議になったんです。最後は千葉さんも納得していました。そうそう、千葉さんには『陽子と浮気しても、妻と同じ名前だからバレないなぁ』と言われたりも(笑)。当時は『みんな、陽子には手を出すな』というお達しも出ていました」

 彼女にとって「トラック野郎」とは何だったのか。

「映画人はみんな純粋ですしね。誰もが熱い気持ちで取り組んでいた。私は居心地のいい場所を見つけられたと思っていますね」

 そう言って彼女は、女優を愛し、愛された鈴木監督の死を惜しむ。

「映画が終わってからも、監督にお手紙は出していましたけどね。でも晩年はお会いすることができなくて残念でした」

 7月17日からは、池袋・新文芸坐にて「鈴木則文追悼映画祭」が催される。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/6/24発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク